【私のこれから】バイヤー・土器典美さん。アンティークショップやギャラリーを経て長年考えてきた人生のかたち。

土器さん アンティーク

青山の住宅地にひっそりとあるギャラリー「ディーズホール」。ここで美しく、センスのいい絵画や彫刻を紹介してきた土器典美さん。今年70歳を迎えて、暮らしを見直し始めているのだとか。今回はそんな土器さんにお話を伺いました。


青山でカフェやギャラリーをもう40年。ちいさな場所にも憧れます。

ギャラリーを訪れる人に暮らしを豊かにしてくれるアートを伝え続けてちょうど20年。その前に営んでいたアンティークとカフェの店などから数えるとほぼ40年にわたって、青山で仕事をしてきた土器典美さん。

「好きな作家さんの共感できる作品をお客さんにつなぐことをずっとやってきたし、それが好きなんです」最初は無名だった作家がディーズホールで作品を発表して、「どんどん成長し、作品が売れるようになるのを見るのは面白いし、この仕事の醍醐味」。とはいえ、展覧会を企画し、展示販売していくのは簡単ではありません。


作家の展覧会にかける熱意を受け止めて、楽しみに来てくれるお客に伝えるには、土器さんにもエネルギーが必要で、「1週間やるとへとへとになることも」。これからの人生に向けて、仕事をダウンサイジングしていくことも必要なのかな、と最近は思うのだとか。年10本行っていた展覧会を減らす、もっと小さなところに場所を変える。そんな可能性をあれこれと考える日々。子どもはなく、長年のパートナーを8年前に亡くして一人暮らし。一緒に暮らしてきたアンティークや作品を今後どうするかも目下の大きな課題です。

「元気なうちに、愛着あるものを好きな人にあげたいの。時間はかかるかもしれないけれど、自分の手で信頼できる人に渡していけば、ものはつながっていくじゃない?」美しいもの、時間を経て変化したものを次世代にどうつなげるか。アンティーク店やギャラリーを通して長年考えてきたことが、そのまま土器さんの暮らしの見直しにつながります。これからどんな70代の生活を送っていくのか、教えてほしい先輩の生き方です。


『ku:nel』20203月号

写真 森山祐子 /取材・文 船山直子



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