高台のマンションは仕事で出合ったアートを並べたギャラリーのような空間【住まいの履歴】
各界著名人の気になるお住まいを拝見。これまで住んできた家のお話も合わせてお聞きする「住まいの履歴」。今回は「マザーディクショナリー」代表の尾見紀佐子さんのお住まいです。
縁があり、物語が息づくアートや手仕事の品に囲まれて。
急な坂を登り切った先にあるこの住まいに越してきたのは、いまから2年前。高台のマンションの一室は明るく見晴らし良好。リビングからは大きな空が見渡せ、この晴れ晴れとした景色こそこの部屋を選んだ理由だといいます。
21歳を始まりに、20代で3人の子を出産した尾見紀佐子さん。家事と育児、途中からはそれらに仕事も加わり、自分の時間なんて0だった約30年間は、住まいも家族中心のものでした。50代になったいまは、自分が主体の暮らしが紡げるようになってきたと話します。
パートナーとふたり暮らしの家は、さながらギャラリーのよう。壁には大きな油絵や写真作品がかかり、棚の上には壺やオブジェがずらり。それぞれがみずみずしい「気」を発し、優しく調和しています。「TRACING THE ROOTS」というタイトルを掲げ、国内外の表現者とともに合同展示会&マーケットを主催してきた尾見さん。その活動などを通じ、出合ったアーティストの作品をひとつ、またひとつと迎えてきました。「これは土器のくまちゃんの作品、これはこばやしゆふさんにもらったもの……」。アートピースひとつひとつにつくった人の顔が浮かび、それぞれにストーリーがあります。
「かっこいいから、おしゃれだから。そんなふうに選んだものは、この家にはありません。大好きなあの人がつくったから、この人を応援したいから、何かしら縁があって集まってきたものたちです」
次にほしいものは?という問いに、ダイニングテーブル用の椅子がほしいと尾見さん。ずっと仮のものを使っているけれど、わざわざ探してはいないのだそう。「いつか時と縁がきたら、出合えるはず」、そう思っているのです。
住まい年表
20代後半〜30代前半 特別保護区内の家
3人目の子が生まれた時に暮らしたマンションは、世田谷区の「特別保護区」内にあった。「緑豊かで、池もすぐそば。借景が素晴らしかった」
40代前半〜40代後半 代々木上原の家
シングルマザーとして孤軍奮闘していたころ。都心にありながら、広い庭のついた古くて小さな一軒家で、人生の新たなステージとなった。
PROFILE
尾見紀佐子/おみ・きさこ
「マザーディクショナリー」代表。東京・渋谷区にある「景丘の家」など3施設を運営。アーティスト・こばやしゆふさんのマネジメントも行う。町田にある簗田寺で、感性を磨く大人の講座「500年の学校」プロジェクトも始動させたばかり。
『クウネル』2025年1月号掲載 写真/在本彌生、取材・文/鈴木麻子
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