建築家の父から継いだコンパクトな家。エッセイスト・宮脇彩さんのくつろげる部屋(前編)

ほっとする、リラックスできる、落ち着く。クウネル世代にとって部屋は、くつろげることが大切です。それは、家族の形態が変わりひとり暮らしをするようになっても、実家を引き継ぎリフォームすることになっても、都心から自然豊かな地に暮らし替えをしても、そしてパリのアパルトマンでも。自分のスタイルとさまざまなストーリーを持つ16組のくつろげる部屋をお届けします。今回はエッセイストの宮脇彩さんのお部屋です。

後編はこちら

間取り

築約50年、約70平米の家は、父がリフォームした当時のまま。壁を取り払いワンルームにし、壁の色は「元気の出る」黄色に塗り替えた。家具の多くは床の木材と合わせて作り付けに。

メンテナンスを重ね、住みつないでいく。

部屋の片側一面は本棚。旅、建築、料理と、ジャンル別にたくさんの蔵書が収められている。本棚の下には板を取り付け、夫妻のデスクに。いずれも建築家の父・宮脇檀さんがリノベーションを行った。

本棚下の右側は夫のワークスペースに。手元照明はリチャード・サパーの代表作・ティツィオ。中央にはクッションをつなげたようなソファ・マレンコが。近年メンテナンスをして「ふかふか」が復活。

亡き父が世界中から集めてきたアートやクラフトが飾られている。

「ベランダも入れたら20脚はあるかな」

エッセイスト・宮脇彩さんの家にある椅子の数です。マンションの一室、夫婦ふたり暮らしにしては多い印象。リビングの中央にはイームズのラウンジチェアが横たわり、壁際にはウェグナーのザ・チェア、そして窓際にはコルビュジエのカウボーイ・チェアが悠々と……。

亡くなった父は建築家の宮脇檀さん。優れたエッセイストとしても知られ、住宅建築家の憧れの存在です。そして20世紀名作椅子のコレクターでもありました。

窓の外には桜の木が連なり、都心とは思えない豊かな景観。窓際に置かれたル・コルビュジエのカウボーイ・チェアは、最上のくつろぎスポット。「春にはメジロがやってきて、それを眺めて癒されています」

本棚の反対側の壁には、アップリケ作家の祖母・宮脇綾子さんや、洋画家の祖父・宮脇晴さんの作品をレイアウト。綾子さんの作品は、2025年1月25日〜3月16日に開催される、東京ステーションギャラリーでの回顧展(Instagram:@ayako_miyawaki_art)で見られる。

都心の高台に建つ築50年超のヴィンテージマンション。広い敷地内には、木々が連なり、住民が運営するハーブ園があったり、図書室があったり。超都会にありながら親密度が高く、小さな村みたいな不思議な場所です。 「ここは父が亡くなるまで暮らしていた部屋でした。元はアトリエだったところを、終の住処用に整えていたのです」

夫婦がしばらくパリに住んでいた間は空き家になっていましたが、『やっぱり残しておかないと』と、住むことにしました。当時の面影そのままに……。

迫るように桜が咲く窓には大きな障子3枚、部屋の片側いっぱいには本棚が、その下に渡った天板は夫婦のデスクとして活用しています。そして、家の空間を埋めるように名作椅子を配置しました。 「とにかく椅子が一番置けるレイアウトを考えました。もはやパズル」

PROFILE

宮脇彩/みやわき・さい

エッセイスト。暮らしのエッセイを執筆。著書に『父の椅子 男の椅子』『バゲット アスパラ 田舎道』(ともにPHPエディターズグループ)、『ごはんよければ すべてよし』(講談社)。

『クウネル』2024年7月号掲載 写真/大森忠明、取材・文/鈴木麻子

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『クウネル』NO.127掲載

くつろげる部屋が好き!

  • 発売日 : 2024年5月20日
  • 価格 : 1000円 (税込)

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