本誌で活躍中のフォトグラファー柳原久子さん。自宅の屋上で多くの野菜を育て、都会にいながらにして土に近い暮らしをしています。
取材をした時期はさやえんどうやスナップえんどうなど豆の盛り。この季節、柳原久子さんは毎朝、庭の畑に出て、食べ頃になった豆を数本ぽきりと収穫。穫れたてで緑も鮮やかな味噌汁で朝が始まるとは、なんと豊かなことでしょう。
東京の閑静な住宅地に3階建ての自宅兼スタジオを建てて、住み始めて丸2年。以前暮らした都心の家でも、屋上に土を入れて、屋上菜園兼庭園での 庭仕事を楽しんできた柳原さんです。この新居でも、同じく屋上に庭を設け、1階の玄関脇には広くはないけれど、細長い庭も確保しました。
1階の庭には、ミモザやユーカリなどの常緑樹。いちじくやマルメロといった果樹に加えて春には豆、夏にはスイカやきゅうりが育つ畑があります。
3階の屋上にも野菜や各種のハーブ、夏の盛りには茄子やシシトウ、唐辛子がたくさん実ります。
「野菜は全部で10種類くらい、ハーブは15種類くらい育てています。前の家での経験も含めて17年くらい育てていて、虫のつきにくい野菜、育てやすいものがわかってきたので、そういう種類を選んでいます」
庭のケアは毎日毎日続く仕事。特に夏の水やりは朝晩欠かせないし、虫食いへの注意も必要。おっくうに思うことはないんですか?
「もう暮らしの一部なので面倒とか感じないんです。野菜も買ったほうが手軽だし、きれいなものがあるのですが、作ってできるんだったら、そのほうが楽しい。大きな公園が近所にあって、これだけ緑があるのに、って言われるんですが、見るのと育てるのは別なんですよね。野菜やハーブが芽を出して、熟して実って、やがて枯れて、タネを採って、また植える。そんなサイクルをずっと見られる楽しさ。しかもそれが食べられて、おいしい」
そんな生命の循環、力に感心しながら、柳原さんは今日も庭に出て、収穫や手入れに汗を流しています。
柳原久子/やなぎはらひさこ
フォトグラファー
本誌をはじめ、多くの媒体で活躍する写真家。自宅スタジオにて月に数回、プロにヘア&メイクをしてもらい、ナチュラルなポートレートを撮影してもらえる「なたね写真館」をオープンしている。https://natanephoto.com/
『ku:nel』2020年9月号掲載
写真 柳原久子 / 取材・文 船山直子