完璧は目指さない。パリの女性に学ぶフランス流の「素敵な部屋づくり」のコツとは?【前編】

古いものを大切に、完璧を目指さないのがフランス流。だから部屋を飾るものは拾ったものや、不揃いでもOK。でも“好き”という気持ちにはとことんこだわり、だからこそ個性的な部屋が生まれます。今回は、フランスで暮らすアートディレクターの女性のお部屋を訪問。そこから見える暮らしの歴史やセンスに注目です。

PROFILE

Marie = Noëlle HEUDE/マリー=ノエル・ウード

ヴェルサイユ生まれ。幼少期はノルマンディで過ごす。国立芸術学院でグラフィックデザインを専攻。出版社に就職し、1997年よりフリーランスのアートディレクター。

ブロカントを飾って心地よく。古さと新しさが混在する家

真っ白な部屋に映えるペパーミントグリーンの食器棚は、道で拾ったもの。自らこの色にペイントした。IKEAのダイニングテーブルには、ブロカントで買った椅子を合わせて。壁には好きなアートをセンスよく飾っている。

家は私の人生そのものと語るマリー=ノエルさん。夫と大学生の娘と暮らす家は、20年前に購入したパリ郊外モントルイユにある一軒家。メトロで中心部までのアクセスがよく、広いスペースを求めるアーティストに人気のエリアです。

1階にはリビング&ダイニングとキッチン、2階には夫婦の寝室、長女の寝室、そして夫の仕事部屋があります。 壁や家具の上を飾るのは、マリー=ノエルさんがマルシェを回って長年集めたオブジェの数々。

「私はアンティークのコレクターではないので、価値や年代、作家にはこだわりません。どれもひと目惚れし、連れてかえったブロカント。写真やイラストなどのアートがとくに好きで、その中でも色が美しく、デザインがシンプルな50年代のものに惹かれます」

ソファかと思いきや、リビングの壁沿いに来客用ベッドを置き、まさにソファの代用品に。クッションは自分で作ったものや購入したもの。

最近の電化製品のデザインにはあまり惹かれず、たとえばパンを焼くのは昔ながらのポップアップトースター。計量するにもいわゆる昔ながらの量りに、つい手がのびてしまうのだそう。

「好きな年代はあるけれど、インテリアはミックスして楽しむのが好きです。ダイニングルームのように、拾ってきた食器棚とIKEAのダイニングテーブルが同じ空間にあっても、そんなに違和感はないでしょう?」

インタビューの始めに語っていた『家は人生そのもの』という言葉についても、改めて聞いてみました。「家に一番必要な要素は、もちろん快適であることだと思います。でも私は今までずっと仕事をしながら子育てをして、家では忙しく家事をこなして動き回っていました。だから我が家は一度もソファを買ったことがないんです。なぜなら座って寛ぐ時間がないのですから。家はつねにアクティブに動く場所で、寛ぎの場ではなかった。でもそれが、私の人生そのものなんです」

リビングルームで一見ソファに見えるのは、実は来客用のベッドなのです。でも長女が大学生ということだし、そろそろソファで寛げる時間もできるのでは?と聞いてみたところ、

「コロナのロックダウンの中、ガレージを私のアトリエにリノベーションしたんです。今は自分の城の完成を目指して、少しずつ手直ししているところ。家の中に仕事と家族が混在していて居心地が悪い時がありましたが、自分だけの空間を持てたのは、精神的にリラックスできて大きいですね」 と、ソファの購入より、自分の城作りに夢中のよう。残念ながら未完成で撮影できませんでしたが、完成した暁にはぜひ見せてほしいものです。

後編を読む

『ku:nel』2023年9月号掲載 写真/篠 あゆみ、コーディネート/鈴木ひろこ、文/今井 恵

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『クウネル』No.122掲載

やっぱり、家が好き!

  • 発売日 : 2023年7月20日
  • 価格 : 980円 (税込)

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