【住まいと暮らしvol.37】専業主婦から農業が中心に。ワクワクを追いかける日々ー那須真由美さん

部屋やごはん、お気に入りの道具たちを本人撮影の写真で見せていただき、バトンを繋いでいくリレー連載。前回の木本倫子さんのバトンを受けてご登場いただくのは、那須真由美さんです。

那須さんの暮らしのルール

1)ワクワクしたらとりあえずやってみる
2)人やもの、お金の向こう側に思いを馳せる
3)いいことは口に出して相手に伝える

23歳のときにアメリカに留学し、舞台の大道具の仕事をしていた那須さん。アメリカで出会ったご主人と結婚し、2008年にカリフォルニアから京都に移住をしました。

「専業主婦をしながら、仲間と一緒にフリーペーパー『どろんこ』を月一で5年間発行。そこでの出会いから、2015年に京都ファーマーズマーケットの立ち上げに関わりました。アメリカでは日常にあったファーマーズマーケットを京都にも作りたいと思ったんです」

コロナ禍に、休校になった息子さんたちと農家さんのお手伝いをスタート。学校が始まった今も、一人で、週一回のお手伝いを続けているのだとか。

「今までずっと子育て中心の生活をしてきたので、子どもが成長するにつれ、これから何ができるのだろうと悩んでいました。そんな中、夫が申し込んだ仕事が巡り合わせのように決まり、今は世界の在来種や固定種を扱うアメリカの会社のスタッフとして働いています。今までやってきたファーマーズマーケットでの企画や出会い、続けてきた畑のお手伝いが役に立ち、種を通した学びや出会いが、今はとにかく新鮮で楽しいです」

目の前に与えられたことを一生懸命やっていたら、ちゃんとどこかに繋がると実感しているという那須さん。

「これからも、常にアンテナを張っていきたいです。そしておもしろそうな波がきたらとりあえず乗ってみる。専業主婦をしていた私が、なぜか農や種と繋がる暮らしになりました。人生っておもしろいなと思います」

電子レンジや炊飯器、テフロン加工の台所道具はないという那須さん宅。「土鍋と蒸し器、鉄鍋や琺瑯が大活躍。テレビがないので、食卓ではいつも政治やスポーツの話でワイワイ。週一で農家さんのお手伝いに通っているおかげで、新鮮な野菜が食卓に並びます」

 

那須さんの大好きな作品。「夫の祖母の油絵と作品です。私は残念ながらお会いできなかったけれど、受け継がれる作品があることはとても幸せなこと。祖母のアートに囲まれて育った影響かどうか、長男は美術の世界へ。いつか彼らがまた祖母の作品を受け継いでいくのだと思います。子どもが巣立ったら、私も何かアートを始めてみたいです」

 

家族みんな本好きだという那須さん。「わが家の本は棚には全然入りきらないです。息子の手作りの本棚には、夫の趣味でもある竹籠を中心に骨董品をいつも飾っています。日本人より日本の美への意識がとても高く、彼から学ぶことや気付かされることは本当にたくさんあります」

 

農家さんや農業学校などを訪ねる仕事も好きだという那須さん。「この仕事を始めるまで、種苗会社にあまりいいイメージがなかったのですが、いろいろと学んだ今、会社の方々とお話することは学びが多く、毎回ワクワクします」

自然光がたくさん入る、リビングからの景色は特等席。「とにかくここからの景色が大好き。目の前の疏水では、春は桜が満開、そして新緑、6月には蛍が出て、秋には紅葉、冬の雪景色も格別です」

 

 

コロナの休校をきっかけに、家族みんなでリフォームしたそう。「解体に始まり、床材塗装、断熱材、下地づくりからペンキ塗り、外壁の焼杉作りまで、たくさんの工程を設計士さんの指導の元、家族ですることができました。焼杉360枚を1日で焼き上げた圧巻の体験は、きっと子どもたちの人生の思い出にも残るはず」

いつも音楽が流れているという那須さん宅。「息子たちや夫が音楽を奏でることも。すっかり成長した息子たちはもうすぐ家から出ていくかもしれませんが、そうなったら私にもきっとまた新しい世界が始まるはず。寂しいけれど、誇らしい。私もワクワクする方向にどんどん進んでいきたいです」

移動手段は基本的に自転車。「この自転車は留学先のアメリカで25歳のときに買ったので、かれこれ25年の相棒。結婚前に今の夫と北海道を2週間自転車で旅したり、子ども二人を後ろに乗せて植物園や鴨川、幼稚園の送迎と、思い出がいっぱいです」

3年前から誕生日には毎年、三重県にある而今禾(jikonka)へ藍染に行っているそう。「数年前、家族に誕生日を忘れられたとき、不機嫌で誕生日を迎えるよりも、自分の誕生日は自分で祝えばいいと思いつきました。自分へのご褒美の時間になっていて、毎年ワクワクします。家族も快く送り出してくれて、晩ごはんやケーキを用意してくれていることも。今年は50歳を迎えるので、ちょっと特別バージョンにしようかと思案中です」

大原にあるウエンダ・アラヤファームで、今でも週一回続けている畑のお手伝いは、朝9時〜5時頃までで丸一日の作業。「始めた頃は収穫が楽しかったのですが、今では種まきや雑草とり、間引きなど、野菜の成長のお世話をすることの方が楽しいです。自然の中で土に触れる時間は癒しでもあり、運動不足解消にもなっています」

3、4年に一度、髪の毛をドネーションしている那須さん。「白髪も出てきたし、髪の毛の張りもなくなってきているので、いつまでできるかと思っていました。最近、寄付した髪の毛はカツラにするだけでなく、海に流出した油を吸い取ってきれいにするという使い道があることを知りました。このままできるだけ、ドネーションを続けようと思っています」

最近はとっても小さくなってしまったという、お父さんの散歩の写真。「10年前に癌だった母を看取り、その後も畑や卓球、パートや旅行にと元気に一人暮らしをしていた父が、2年前に脳梗塞で倒れて介護中。次から次へとやってくるトラブルに対する自分の心のアップダウンにげんなりすることも多いのですが、同時に色んなこだわりやしがらみを手放すことも学べています。妹と協力できるからこその介護生活。各週末に泊まりで実家に通う日々、2時間かかる道のりの電車の中での読書が癒しです」

家から下鴨神社までは、歩いてすぐ。「月1、2回、友達と糺の森を散歩しながらおしゃべりします。家族のこと、政治のこと、献立やおすすめの本、これからのこと。そんな何でもない時間が、とても贅沢な時間だなと感じます」

週末はピクニック率がかなり高め。「天気のいいときは、家族ぐるみの友達と鴨川でピクニック。子どもたちは鴨川に育ててもらったといっても過言ではないくらい、鴨川はわが家の真ん中に流れています。私たちのもう一つのリビングルームのようです」

 

profile

那須真由美/なすまゆみ

京都市在住。アメリカで出会った夫、二人の息子の4人暮らし。種を扱うアメリカの会社「Baker Creek Heirloom Seed Company」の日本スタッフをしながら、夫の趣味である竹籠をきっかけに事業も行う。

那須さんがバトンを渡すのは、北海道で「haku hostel」を運営する菊地恵実子さん。「留学先のカリフォルニアで出会いました。出会ったときからずっと美しい人だなと思っていましたが、ここ数年の彼女の暮らしがますます美しく素敵に! 今は、お互い遠く離れた場所で暮らしているので、たまにメールのやり取りをするくらいなのですが、私自身が彼女の暮らしをのぞいてみたいので楽しみです」と那須さん。菊地さんの暮らしは、7月上旬に公開予定です。どうぞお楽しみに。

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