四季の移ろいを感じたい。抜けのよい借景を求めて移り住んだ家【料理家・スズキエミさんの暮らし】
自宅で料理教室を主宰している料理家のスズキエミさん。季節をきちんと感じられる、住まいと暮らしとは?
PROFILE
スズキエミ/すずきえみ
レストランやカフェの勤務を経て料理家となる。料理教室『一汁一菜暦ごはん』主宰。著書に『季節を味わう手仕事レシピ』(主婦の友社)などがある。Instagram:@suzukiemi.gohan
日本の昔ながらの暦に準ずる食や料理を大切にしている料理家のスズキエミさん。出身は宮城県石巻市で、代々、農業を営む家に生まれました。四世代が同居するにぎやかな家だったと振り返ります。
「私が産まれる前の年に建てた二階建ての家でした。母屋のほかに納屋や味噌部屋、農機具を置いている小屋などもあり、まわりには畑が広がっていましたね。抜けがあって気持ちいい場所。この開放感はかけがえのないものだと大人になってから帰るたびにしみじみと思うのです」
高校卒業後に上京し、東京に暮らして早30年以上。いくつかの集合住宅暮らしを経て、結婚して子どもが産まれてからは、一軒家を選ぶようになりました。いまの住まいに引っ越してきたのは7年ほど前のこと。上京してから6軒目の住まいです。
「私、引っ越しはかなり粘るタイプなんです。何十軒もとことん物件を見て、本当に納得したうえで決めています。この家もそう。料理教室を開くつもりだったので、キッチンの壁を取り払って広く使えるようリフォームしました。このあたりは都心へのアクセスはそこまで悪くないのに、ちょっと奧へ入ると自然が広がっていてのんびりしているのがいいんです。家の裏にも大きな畑があって、いまの時期は菜の花がきれいなんです」
そう言って指さした窓には黄色い絨毯のような菜の花畑が広がります。
子どものころから、祖母や曾祖母が畑仕事や家の仕事をする姿を当たり前の光景として見てきたスズキさん。四季を感じられる住まいへ導かれたのは必然だったのかもしれません。とても気に入ってはいるけれど、永住するかは分からない、と首をかしげます。
「夫婦ともにフリーランスなこともあってずっと賃貸暮らしです。地方移住を考えもするのですが、息子がこの地域の給食を気に入って引っ越したくないと言っています。この先、またどんな場所で暮らすことになるかを考えるのも、ワクワクしますね」
『クウネル』2023年7月号掲載
写真/萬田康文、取材・文/結城 歩
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『クウネル』No.121掲載
料理好きな人のいつものごはん
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