【エッセイスト・石黒智子さんがお金について考える/前編】いいお金の使い方は、労働の価値を高めます

「あれば安心」のお金ですが、どれくらい必要で、どんな風に使うのが快適かは、人によってちがいます。「これから」を見据えたお金との心地よい関係についてさまざまな価値観の方に伺いました。

石黒智子/いしぐろともこ

収納や家事のアイデア、人付き合いのヒントなど、 暮らしにまつわる情報を独自の観点で発信。近著は暮らしにまつわる情報を独自の観点で発信。近著は『60歳からのほどよい暮らし』(PHP研究所)。

エッセイスト・石黒智子さんのお金に関しての考えとは?

『60代シンプル・シックな暮らし方』 『60歳からのほどよい暮らし』と、近著2冊のキーワードは60代。それは50代のときと、60代の暮らしでは「全く違う」と感じたからだといいます。持ち物を見直し、暮らし方をアップデート。60代の自分ならではの「気づき」を綴っています。以前と比べると体力、持久力は落ち、 記憶力も衰えを感じざるを得ない。「でも、それ以上にたくさんの発見があります」という言葉に勇気を得ます。

さて、いつも明晰に、暮らしの工夫を私たちにシェアしてくれている石黒さんですが、お金についてはどんな考えをお持ちなのでしょうか?

「私にとってお金は労働の対価です。 本を出版して得るお金は、時間で計算される給料とは違って定額ではないのですが、私の価値観や生き方には向いている仕事だと思っています」

「お金を惜しまず、最良のものを選んできた」という台所道具。「リベラー」の片手鍋は約40年前に買って以来、台所の一軍。

幼い息子用に選んだ文房具。はさみはドイツ製。1,800円と子供用にしては高価だったけれど、30年以上使い、元は取った。

自分の暮らしのアイデアの発信を仕事としている石黒さん。原点は30代のころのコンクール応募なのだとか。

「30歳で家を建て、35年ローンを組みました。いまの低金利と違って、当時の金利は固定で5.5%。1日でも早く完済したいと思い、毎月10日に定額返済、25日に翌月の生活費を残して繰り上げ返済をしました」

当時、欲しい台所道具がありましたが、そこに回す余裕は無い。そこで、見つけたのが、とある料理コンクール。当選の賞金が目当ての調理道具でした。狙い通りに見事、獲得した石黒さんはすごいとしか言いようがありませんが、以降、育児やインテリアの論文で次々と賞金や賞品を得て、それらで暮らしの質を上げていったのです。そして、住宅ローンは早々に完済。

「それからは現金払い。手元にあるお金で買えるもので暮らす、というのが我が家のルールになりました」

可動式テーブルを風通しのいい窓際に移動して、心地よい朝のひととき。並べた文房具は、かつて幼い息子用に買ったもの。

『クウネル』2022年11月号掲載
写真/柳原久子、杉能信介(石黒さん)、 取材・文/鈴木麻子

SHARE

『クウネル』No.117掲載

あの人が心がけている60歳からの幸せルール

  • 発売日 : 2022年9月20日
  • 価格 : 980円(税込) (税込)

IDメンバー募集中

登録していただくと、登録者のみに届くメールマガジン、メンバーだけが応募できるプレゼントなどスペシャルな特典があります。
奮ってご登録ください。

IDメンバー登録 (無料)