【マチュア世代が選ぶ3冊】 「市場の古本屋ウララ」店主・宇田智子さん 沖縄がより身近になる、 ユニークで愉快な本たち。

都会の大型新刊書店員から、那覇の牧志公設市場の向かいの小さな古本屋の主へ。転身した宇田智子さんが沖縄をもっと知りたくなる3冊を教えてくれました。

宇田智子/うだともこ

大学卒業後ジュンク堂書店勤務を経て2011年那覇に「市場の古本屋ウララ」を開店。著書に『本屋になりたい』(ちくま文庫)など。

宇田さんのセレクトはどれもユニークな視点から沖縄を扱った本。「暮らしている人の気配があり、自然にその背景にある歴史にまで思いが至るような」、沖縄への興味をかきたててくれる3冊です。

『沖縄の食文化』 外間守善

沖縄の食文化』 外間守善
ヤマトとは異なる魅力的な食材、料理法、食の風習を、 体験をまじえて解説。著者の好みを反映しお菓子の紹介が充実。1,100円(ちくま学芸文庫)

『沖縄の食文化』は、沖縄学の第一人者が、自身の記憶を織り交ぜながら綴った、親しみやすい食文化の本です。 「食を題材に、アジアの中での沖縄の位置づけや歴史が、とてもわかりやすく書かれています。お菓子をはじめ沖縄では食べ物と季節や行事が密接に結びついていることを改めて感じます」

『めんそーれ!化学 おばあと学んだ理科授業』 盛口 満

めんそーれ!化学 おばあと学んだ理科授業』 盛口 満
肉じゃが作りから化学変化を学ぶような楽しい授業が 1冊に。おばあたちが「ああ」と実体験と結びつける話が愉快。968円(岩波ジュニア新書)

那覇の夜間中学での活き活きとした化学の授業をまとめたのは『めんそーれ!化学』。生徒の多くは戦争で学校へ行けなかったおばあたちです。 「金属の授業から昔アメリカの硬貨をたたいてかんざしを作った話になったり、化学の世界とおばあたちの生活体験を結ぶ話にびっくり。 特に食の体験は『沖縄の食文化』と重なり、併せて読むとより楽しめます。私の店でも、買い物帰りに手にした料理の本をきっかけに、不意に昔の話をしてくださる方がいて。市場に店を持つ醍醐味です」

『オキナワノスタルジックタウン』 ぎすじみち/写真・文

オキナワノスタルジックタウン』 ぎすじみち/写真・文
本業はデザイナーである著者の、アンテナにひっかかったレトロな光景が満載の写真集。版元は沖縄の元気な出版社。2,640円(ボーダーインク)

3冊目の『オキナワノスタルジックタウン』は沖縄のレトロな建物や面白看板を90年代から撮りためた写真集。
「建物の独特の形や看板の不思議な文字が、作られた当時を想像させます。南部・北部・中部・離島と場所によって雰囲気が違い、見ているだけで街を歩きたくなる。
前2冊同様、沖縄への入り口になればうれしいですね」

『クウネル』2023年3月号掲載
取材・文 丸山貴未子

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『クウネル』No.119掲載

パリ・東京 おしゃれスナップ138

  • 発売日 : 2023年1月20日
  • 価格 : 980円(税込) (税込)

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