「 岸本訳にハズレなし 」と言われる海外文学の翻訳や、不思議な味わいのエッセイで楽しませてくれる岸本佐知子さん。「女性が元気になる、かもしれない3冊」を選んでくれました。
岸本佐知子/きしもとさちこ
目利きの岸本さんの推し、ショーン・タンの新作絵本『いぬ』(河出書房新社)が7月21日に発売。人間と犬の切ない物語です。
『真似のできない女たち』
山崎まどか
40〜70年代にアメリカに実在した女性21人の評伝集です。「作家、料理研究家、歌手など活躍する世界はまちまちですが、タイトル通り全員破天荒。心の中に子どものままの純な部分を残していて、周囲に忖度せず、自分の好きなように生きた人たちです。今の時代でもむずかしいことを、こんな昔に成し遂げていた人が大勢いたんだと感心し力づけられます」
『パッセンジャー』
リサ・ラッツ 訳/杉山直子
「このヒロインは何者?」という謎で最後まで引っ張っていくミステリ小説。「少しでも危険を感じ取ると、彼女は即座に決断して逃げ出すんですね。その行動力と肝っ玉、スピード感が伝染して、読後は自分も孤独で強い女になった気分で元気が1目盛り増します」
『私たちにはことばが必要だ』
イ・ミンギョン 訳/すんみ・小山内園子
性差別者にどう対処するか、韓国のフェミニストがマニュアル本の形式でわかりやすく説きます。 「女だというだけで理不尽な目に遭ってきた女性が、差別的な発言にどう言い返したらいいか。まるでスポーツの教則本のように淡々と書かれていますが、ときどき蓄積された並々ならぬ怒りが噴出するところも面白い。性差別者のありがちな発言などを図解したチャートも秀逸です。前の2冊も含めて、男性にこそ手にとってほしいですね」
取材・文/丸山貴未子 再編集/久保田千晴