初めての料理、土地の人との交流、心動く景色……。旅でしか得られない体験はいくつも。「そろそろどこかへ 」。そんなあなたを刺激する「あの旅 」を写真とともにシェアしてくれました。
林 雅之さん /はやしまさゆき
フォトグラファー
東海大学教養学部在学中より写真を始める。主な作品展に「景花」(2009 年)、「TAKACHIHO 天地水神」(2022年)など。
www.mho.jp
宮崎/高千穂
神々の気配を肌で感じ日常を忘れ、豊穣な世界にひたる
最初は仕事で訪れた高千穂に、すっかり魅せられてしまった。天孫降臨の舞台であるこの地は、日本有数のパワースポット。全国から多くの人を集めるが、滞在を重ねるにつれ、観光地の印象は消失。八百万の神の神議がなされたとされる大洞窟の天安河原、雲海の名所の国見ヶ丘、懸崖渓谷の美しい高千穂峡、 夜ごと神楽が拝観できる高千穂神社……どこも不思議と色彩を意識しない、静謐なモノクロームの世界として脳裏に記憶されていった。
そこに広がるのは、人間の所業が及ばない冴え渡った世界。聖地ならではの豊かな精神性も感じられた。ただし訪問は、秋をお勧めする。夜神楽が始まり、雲海にも遭遇しやすく、そして何より山々を覆う紅葉だけは、カラーのまま目に留めておきたいので。
TRAVEL DATA
おすすめのホテル:「ソレスト高千穂ホテル」。高千穂を撮り下した自身の作品が各客室とパブリックスペースに常設されている。
おすすめの料理、レストラン:神話伝承の話を聞いたり、高千穂を知るには地元の人との交流が一番。地酒や郷土料理もおいしい、街の中心部にある居酒屋「けんちゃん」
『クウネル』2022年11月号掲載
取材・文/阿部里歩、田代 格、友永文博、船山直子、石毛幸子