日本の一流ホテルの筆頭・『帝国ホテル 東京』の『パークサイドダイナー』でいただくカレーは、伝統のカレーソースが野菜の甘みを際立てていました。
色とりどりの野菜が添えられたライスがサーブされた瞬間、野菜カレーのイメージが一瞬にして覆ります。帝国ホテルの野菜カレーがこのスタイルになったのは、20年以上前。常連だった女優の森光子さんからのリクエストがきっかけでした。
一方、ソースのレシピは、帝国ホテルにカレーが登場した昭和6年頃から基本は変わらず。第8代料理長・石渡文治郎氏がパリの『ホテル・リッツ』で学んだ英国風カレーをベースに、日本人の口に合うようアレンジした味を守り続けています。野菜と果物をたっぷり使い、裏ごしをせず粒感を残しているのが特徴で、スパイシーながら素材の甘みを感じる、まろやかな味わいです。
『ku:nel』2019年7月号掲載
写真 キッチンミノル/取材・文 和田紀子