【私の東京の味】ウー・ウェンさんが教えてくれた、東京の確かな外食処3軒(後編)

「せっかく外食するんだし、お金もかけるんだから失敗するのは嫌ですよね。それで自然と行きつけの店は決まってくるみたい」

ここで紹介する東京の比較的新しい3つの飲食店は、ウーさんの厳しい選択眼、おいしいものとそうでないものを見分ける敏感な舌を満足させるお店です。後編ではタルト専門店と蕎麦会席の名店をご紹介します。

甘いものはそれほど食べないけれど、焼菓子が一番好きというウーさんは、クッキングサロンの近くにある『アムストラムグラム』もごひいき。とくに好きなのはタルトタタン。

「ここのタルトは甘すぎなくて、タルトタタンもリンゴの風味がたっておいしいんです。使っている果物もいいものなんでしょうね。どれも大人の味。クッキーもおすすめですよ」

3軒目の『蕎庵 三たて』はマグロとお蕎麦を同時に楽しめる、ちょっと毛色の変わった日本料理店。蕎麦や日本料理をいろいろな名店で学んだ料理長のセンスが光る大人のお店です。シャンパーニュをはじめドリンクのラインナップも充実。

「お蕎麦の常識を超えた料理、ゆっくりお酒とお料理を楽しみたいときにおすすめです。中でも幅広に切った蕎麦を藻塩で食べるそば刺しや、コースの最後に出てくる小さな鉄火丼が楽しみ」

いずれもおいしいとは何かを真摯に追い求める作り手の静かな情熱が感じられるお店。ウーさんが応援する気持ちにうなずける東京の味です。

『AM STRAM GRAM』焼きたて、できたてを提供するフルーツタルトの楽園!

フルーツの旬、カットの方法、合わせるクリーム、すべてに細かい心配りが。

店の代表的タルト〈アムストラムグラムpic!〉イートイン977円、〈ドライフルーツティ〉700円

パイ生地が焼ける甘い香りにさまざまなフルーツの香りがまじりあって、お店の中にいるだけで幸せな気分になってくるタルトの専門店。ウーさんのクッキングサロンのご近所にあって、お店が開いた3年前からずっとひいきにしているのだとか。

「タルトは毎日15~16種類用意します。すべて毎朝、生地を焼くところから始めて、作り置きはしません。できたてを召し上がっていただきたいのです」と広報の飯塚佳代さん。

組み合わせる果物によって、生地やクリームを変えていくのがこの店のやり方。きびきびと仕事するスタッフの姿にも彼女たちのタルトへの愛情が伝わってきます。

週末には長い列ができる人気店、予約をして出かけるのがいいようです。

〈旬のデコポンのタルト〉、ピールをのせてさらに香りが豊かに。 1ピース、イートイン886円、テイクアウト870円

イートインは16席。虎ノ門ヒルズステーションタワー店もある。

AM STRAM GRAM(アムストラムグラム)

住:渋谷区恵比寿西1-16-8
営:11:00~20:00
休:火、隔週月か水(インスタグラムで確認を)
予:テイクアウト、イートイン共に予約可
AM STRAM GRAM公式HP

『蕎庵 三たて』シックな店内でゆったりと、マグロと蕎麦のマリアージュを堪能。

マグロの仲卸しを営む『やま幸』グループが運営する蕎麦会席の店として、2年ほど前に麻布十番にオープン。日本料理の名店『京味』などで修業した三浦幸喜さんが料理長を務めます。『やま幸』が提供する一級のマグロと、蕎麦粉の産地にも精通した三浦さんが打つ蕎麦をコースで同時にいただけるのがこちらの特徴。

「三たて」とは、蕎麦の“挽きたて、打ちたて、茹でたて”を意味していて、蕎麦への熱く、誠実な思いが込められた店名です。平日は10品前後で税込み1万6,500円のコースのみ。コース終了後の20時30分ころからはアラカルトメニューで一献、も可能。(写真のマグロ以外の料理はコースの一部。アラカルトでの注文も可能)

〈マグロの食べくらべのお造り〉、少しずつ違う風味を楽しむ。3,200円〜

蕎麦のジェノベーゼはこしあぶらがソースに。蕎麦の実がアクセント。

蕎麦粉ガレットにはマグロのかき身とキャビアが。隠し味にわさび。

蕎庵 三たて

住:港区麻布十番2-8-12 リレント麻布十番201
営:18:00~23:30(L.O.) 土曜日14:00~21:00(L.O.)
休:日、月
予:予約可
蕎庵三たて公式インスタグラム

そのほかのおすすめは...

「実は外食はあまりしないんですよ。ふたりの子育てでずっと大変でしたし、仕事も忙しいからね」

ましてや中国の家庭料理をあまたの生徒に伝え、雑誌や書籍で紹介してきた達人、とびっきりおいしい味を家族に作ってきたウー・ウェンさんだから、外食よりお母さんの手料理を子どもたちも楽しんできたのでしょう。

「でもね、家庭では作れないもの、外で食べるのがいい場合もありますよね。たとえば、フレンチならば三田の『コートドール』や恵比寿の『モナリザ』には長いこと通ってきました。老舗中華の『富麗華』には開店当時から通っています」

いずれも名高い名店、その味、サービス、店のもつ雰囲気、すべてが最上のおもてなしを約束してくれる一級のレストランです。

PROFILE

ウー・ウェン/うー・うぇん

中国・北京生まれ。ウー・ウェンクッキングサロンを主宰。『10品を繰り返し作りましょう』(大和書房)で料理レシピ本大賞受賞。近著に『ウー・ウェンの蒸しもの お粥』(高橋書店)。

『クウネル』2024年 5月号掲載 写真/新居明子、取材・文/船山直子

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『クウネル』No.126掲載

私の好きな東京

  • 発売日 : 2024年3月29日
  • 価格 : 1000円 (税込)

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