「日本料理が世界で一番好き」。京都ツウのフランス人作家が勧める「美食スポット」3選

歴史と自然、そして美食に溢れる街・京都。今回は、京都ラバーであり、世界的ミリオンセラー小説『優雅なハリネズミ』(早川書房)などで有名なフランスの作家、ミュリエル・バルベリさんに、京都の美味しいお店を3軒、紹介してもらいました。

PROFILE

ミュリエル・バルベリ/Muriel Barbery

世界的ミリオンセラー小説『優雅なハリネズミ』(早川書房)などで知られるフランス在住の作家。近著に、京都で暮らした経験を元に書かれた『京都に咲く一輪の薔薇』(早川書房)など。

小説にも登場する思い出の京都の味

小津安二郎や黒澤明、溝口健二の映画の世界に惹かれ、同じく日本に憧れを抱いていた元夫と共に、約2年間京都に暮らしたことがあるという作家のミュリエルさん。フランス帰国後も、20回以上は訪れているという京都フリークで、小説『京都に咲く一輪の薔薇』には、フランス人の視点から見た京都が美しく描写されています。

「京都の寺院や庭園、伝統的な建築物に、今まで訪れてきた西洋美術にはない、美的な喜びを感じました。偏在する山々、午後4時に鳴り響く法然院の鐘の音、高い建物がなく、整然としているようでしていない町並み、日常の些細なことの中にある美しさを愛する精神。京都のすべてが魅力的で、何度も訪れたくなります」

日本語が話せないにも関わらず、文化や言葉の壁を越えた友人に恵まれたことが、京都滞在をより豊かなものにしてくれたというミュリエルさん。美食家の友人に案内してもらった店や、思い出深いお気に入りの店を、特別に教えていただきました。

「モロッコで生まれフランスで育ち、今まで数々の国を旅してきましたが、日本料理が世界で一番好き。食事、文化、この街の精神……初めて訪れた時からすべてに心をつかまれてしまいました。これからも度々訪れ、理解を深めていきたいと思っています」

『大徳寺一久』の〈大徳寺精進料理縁高〉

〈大徳寺精進料理縁高〉(4,840円)。精進料理のビフテキと言われる登録商標の大徳寺麩、豆腐を甘辛く焼いた犠牲豆腐や筏牛蒡、季節の和え物や野菜などが、弁当に見立てた縁高に美しく盛られている。

まずミュリエルさんが挙げてくれたのは、『大徳寺一久』の〈大徳寺精進料理縁高〉。肉や魚を使わない精進料理の、豊かな風味や彩りに感嘆したそうです。

「美しい庭園を臨む個室での食事、漆塗りの器に盛られた料理は美しく、エレガントで洗練されていて、まるで夢の中にいるような、最高の食体験を味わいました」

茶懐石の流れを汲む本源の精進料理を、美しい庭を臨む個室でいただける。

500年以上に渡って大徳寺の料理方を務めてきた歴史のある店構え。

大徳寺一久

住:京都市北区紫野大徳寺下門前町20
電:075-493-0019 ※要予約
営:12:00~21:30(最終入店18:00)
休:不定休
http://www.daitokuji-ikkyu.jp/

『おめん 銀閣寺 本店』の〈つけめん おめん〉

昆布と鰹の出汁に薬味をたっぷり入れ、国産小麦の自家製おうどんをつけて食べる〈つけめん おめん〉(1,280円)は創業からのスペシャリテ。甘辛く炊いたきんぴら、胡麻、ネギ、生姜に、季節の野菜など8種類の薬味が器に高々と添えられたビジュアルに食欲がそそられる。

ミュリエルさんが京都初訪問の際に訪れた思い出の店が『おめん 銀閣寺 本店』。

「内装、料理、店の雰囲気、すべてが素晴らしいと感じました。うどんはもちろん、〈大山地鶏の山椒焼き〉も必ず頼みます。冷えたビールを飲みながら、店の雰囲気に浸りつつ食事をするのが、京都を訪れる楽しみのひとつです」

おめん 銀閣寺 本店

住:京都市左京区浄土寺石橋町 74番地
電:075-771-8994
営:金・土・日/11:00~21:00 (20:00L.O.)、月・火・水/11:00~ 18:30(17:30L.O.)
休:木
https://omen.co.jp

『梨門邸(なしもて)』の炭火焼き

店内は炭火の焼き場を囲むカウンター10席。炭の焼ける音や香ばしい匂いをライブ感覚で味わいながら、店主の焼き捌きを眺めるのも楽しい。

美食家の友人に案内してもらったという隠れ家的な名店。

「料理はすべて、シンプルだけど洗練されていて謙虚で完璧。季節の魚や肉の炭火焼きはもちろん、ちょっとしたおつまみや土鍋ご飯などすべてが美味しい。いつも軽い気持ちで訪れるのですが、帰りは苦しくて大変です」

じっくり火を通して焼く〈うなぎ蒲焼〉(3,300円)、ジューシーな〈京赤地鶏もも焼〉(1,100円)、〈レンコン炭火焼〉(550円)を生ビール(660円)のおともに。

梨門邸

住:京都市左京区浄土時上南田町37
電:075-751-2608
営:11:30~13:00(L.O.) 18:00~22:00 ※昼・夜ともに要予約
休:火・水 ※不定休あり

『クウネル』11月号掲載 撮影/中島光行、取材・文/前谷莉衣、吾妻枝里子

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『クウネル』No.123掲載

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