本格的なフレンチで培った技をベースに、気取りのないナチュラルな空間で、ビストロ料理と自然派ワインを気軽に楽しめる店として、2010年にオープンした『メゾンサンカントサンク』。移転リニューアル後の店舗は、代々木上原駅西口から徒歩10秒ほどとアクセスも良好です。

木材を多用した温かみのある雰囲気はそのままに、3フロアに分かれていた店舗は広々と解放感のある1フロア構成になっていました。オープンキッチンのライブ感が楽しいカウンター席、ゆったりと寛げるテーブル席に加え、この周辺では希少なペット同伴可能なテラス席もあります。緑に囲まれたデッキテラスは、本場パリのような雰囲気で、屋外の風も気持ち良くそよいでいました。

この夏刷新されたランチは、これまでのコース仕立てから、多彩な料理を一度に提供するランチセットへと変更となっていました。旬食材を使ったスープ、前菜、パン、温菜、デザートがついて4,000円という内容で、ワンドリンクオーダー制になっています。

訪れた日は、夏の味覚・トウモロコシのスープが登場しました。自然な甘さのトウモロコシのスープにプチプチと弾ける海ブドウの塩味、シェリービネガーのクリームの酸味、アピオスという食用花のハーバルな香りが印象的です。

そしてパンは、焼き立てのローズマリーのフォカッチャ。モチモチ＆フカフカ食感でローズマリーが芳しく、そのままでもスープと一緒でもおいしくいただけました。

「いろんなフレンチを食べてもらいたい」という代表の丸山智博さんの想いから生まれた創業以来の人気メニュー「前菜の盛り合わせ」は、8〜10種類と、以前よりもさらに充実していました。

訪れた日は「オレンジとクミンのキャロットラペ」、クリーミーなチーズの「ストラッチャテッラ」、「自家製ハム」、「ワイルドライスとリーフレタスのジェノベーゼ」、「つぶ貝のタルタル、加賀太キュウリのピクルス」、「コリンキーのサラダ、プラリネのビネグレットと黄トマト」、「白レバーペースト、クランベリーのチュイルとジャム」、「マッシュルームと青海苔、ワカメ、昆布のピクルス」の8種盛り合わせ。どれも本場パリを感じさせる本格的な手仕事と味わいで、スパイスやハーブの使い方のうまさから、ついついワインをオーダーしたくなってしまいます。

お店で提供されるワインはどれも自然派ワイン。昼飲みにぴったりな軽いものから、前菜盛り合わせに合うワインなど、気さくなスタッフがおすすめの一杯を提案してくれました。

この日の温菜は、フレンチと中華の王道のコラボレーションともいうべき「鴨コンフィとズッキーニの春巻き」。添えてあるのはソテーした茄子、ザータルという中東のミックスハーブを付けたローストトマト、フォン・ド・ボー入りのバルサミコを煮詰めたソース、コリアンダーやライム、青唐辛子入りのピュレです。

旨味が凝縮された鴨のコンフィにとろける茄子が合わさった揚げたての春巻きは、付け合わせやソースとお好みで合わせることで、オリエンタルに味が広がっていきます。多国籍な人々が集う、いまのパリの味をそのまま持ってきたようなビストロに進化していると感じた一品です。

デザートはプラムと黒糖のクランブルたっぷりな「ヌガーグラッセ」が登場。甘さはハチミツだけでつけているそうで、全体としてナチュラルな味わい。キャラメリゼしたナッツの風味が香ばしく、具沢山で口の中が楽しいヌガーグラッセでした。

ランチセットには、静岡北山農園など農家直送の新鮮野菜やハーブを約30種類も使用しているそう。いまのパリのトレンドを体現したようなヘルシーでおいしいビストロで、昼からワイン片手にランチを楽しんでみては？

写真・文／中森りほ