お菓子の本場・パリでいま注目なのは、意外にもしみじみ美味しい素朴なケーキ

パリとフランスにまつわる情報サイトTRICOLOR PARISの主宰・荻野雅代さんと桜井道子さんおふたりが、毎月交替でフランスから日々の暮らしをご紹介。今月は桜井さんが、パリで注目の「シンプル系パティスリー」について教えてくれました。

今パリはシンプル系パティスリーが人気

バスティーユにこのごろお気に入りのパティスリーがあって、自宅から遠いのにも関わらず、気がつくと引き寄せられています。それは、1ツ星レストラン『Septime(セプティム)』チームがオープンしたお店Tapisserie(タピスリー)

パリ11区シャロンヌ通り65番地、庶民的な雰囲気とおしゃれなお店が共存する地区にある。評判を呼んでか、左岸のエッフェル塔近くにサロン・ド・テを併設した2号店が誕生した。

並ぶのはタルトやシュー、フィナンシェなど、一見すると素朴な「おやつ」なのですが、食べてみると、上質なバターやクリーム、旬のフレッシュなフルーツを使っていることがひと口でわかり、しみじみとおいしい。パリには芸術とも言えるような美しく繊細なパティスリーを並べたお店はいくつもありますが、私自身も含め、そういう個性的なものを食べ尽くしたパリジャンたちが今、一番求めているのはシンプルなお菓子のおいしさなのかもしれないと思う今日このごろです。

『Tapisserie』のショーケースには、季節のフルーツを使ったタルトやフィナンシェ、スコーンなど気取らないお菓子が並ぶ。ハルガヤという野草で香りをつけたクリーム入りのシューも人気。

こんもりと盛られたクリームが魅惑的なメープルシロップのタルトは『Tapisserie』の名物。そして奥に見えるフランとチョコレートエクレアは、まさにフランスのおやつの定番。

そのTapisserieでも人気の、昔ながらの焼き菓子のひとつが、フランです。タルト生地にカスタードクリームを流して焼いたもので、どこのブランジュリーにも必ず置いてあるくらい、おやつの定番なのですが、シンプルなだけに味の良し悪しがわかりやすいお菓子でもあります。ここ数年、多くの有名パティシエたちが腕によりをかけてフランを作っていて、庶民的な存在から、すっかり流行りのお菓子になった感があって面白いです。

伝統的なフランはバニラ風味のカスタードクリームが特徴。でも最近はいろんなバリエーションも生まれている。これは日本人パティシエのお店『Pages Blanches』の抹茶フラン。

素朴なおやつといえば、このところ、パリでは〈バブカ〉もブーム。もともとは東欧生まれで、特にユダヤ人たちがお祝いの日に食べたとされる甘いパンですが、生地にチョコレートやシナモンのペーストを練り込みアレンジされてますます人気になりました。フランスにはあまりなかった、もちっとした食感が新鮮でウケているのか、いろんなブランジュリーで見かけるようになったバブカも、定番おやつの仲間入りをしつつあります。

パリのバブカ・ブームの火付け役とも言える『Babka Zana』。チョコレートはもちろん、ヘーゼルナッツやピスタチオ、胡麻ペーストなどを練り込んだ香ばしいバブカが大人気。

写真・文/桜井道子

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トリコロル・パリ

荻野雅代さんと桜井道子さんのユニット。パリとフランスにまつわる情報サイトTRICOLOR PARISを主宰。最新ニュースやカルチャー、旅行・観光情報をはじめ、さまざまな情報を発信している。初のエッセイ『フランスの小さくて温かな暮らし365日~大切なことに気づかせてくれる日々のヒント』(自由国民社)は6万5000部のヒットに。
https://tricolorparis.com/

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