食材の持ち味を生かし、どこでも手に入れられる調味料を使ったレシピに定評がある料理家の大庭英子さん。その料理は思わず「おいしそう!」と口にしてしまうほど、どこかダイナミックなビジュアルで、実にそそられます。
長年、第一線で活躍され、数多くのレシピ本を出版されていますが、今年6月に新刊『68歳、ひとり暮らし。きょう何食べる?』を上梓されました。
長年の経験を基に提案するのは、ひとりごはんを愉しむための工夫やアイデアなど。
その一部をシリーズで紹介します。最後には大庭さんの特別インタビューも掲載予定です。どうぞお楽しみに。
料理家という職業柄、仕事では大皿料理を作ることも多いわたしですが、プライベートではひとり暮らし。日々、ひとりの食事を愉しんでいます。
ひとりごはんのいいところは、その日の気分やおなかの具合で、自由に献立を決められること。具だくさんのみそ汁とご飯、パンとサラダといった簡単な食事でも、家でゆっくり自分のペースで食べられるのは、ひとりごはんの醍醐味だと思います。たまに少し高級な刺し身や肉を買えるのも、ひとりだからこそですよね。
とはいえ、自分のためにだけ食事を作ることを面倒に感じることもあるでしょう。そこでこの本では、わたしが毎日食事を作るなかで生まれた、料理がラクになってちょっと楽しくなる、そんな工夫をあれこれ紹介しました。
気軽に外食をすることもままならない昨今、家で食事をする機会が増えた方も多いのではないでしょうか。そんなときにこの本を開いていただき、ひとりの食事は自由で愉しい、と思っていただけたら何よりです。
※「はじめに」より抜粋
■野菜をせん切りにしておくと、いろいろな料理に使い回せます。
野菜の下ごしらえで意外に面倒なのが「切る」工程。とりあえず買ってきて冷蔵庫に入れはしたけれど、なかなか使うきっかけがない。丸のままだと、次でいいかと思って見送ってしまうこともありますよね。
そこでわたしが実践しているのが、野菜をせん切りにしておくこと。それだけ?と思うかもしれませんが、たったそれだけで料理を作ろうという気になるんです。生のままサラダやつけ合わせにするのはもちろん、スープやみそ汁の具にしたり、炒めたり、煮たりと加熱してもおいしく、短時間で火が通ります。
わたしがよく作っているのはキャベツ、大根、きゅうり、にんじん、セロリのせん切り。数種類作っておくといろいろな料理に使えて便利。ポイントは、できるだけ細く切ること。口当たりがよくなり、無理なく体の中に入っていきます。
[1]キャベツは4等分のくし形に切って芯を斜めに切り落とし、繊維に逆らってせん切りにします。にんじんは皮をむいて野菜スライサーで細いせん切りに。きゅうりは斜め薄切りにしてからせん切りに。大根は皮をむいて半分の長さに切り、縦薄切りにしてからせん切りに。セロリは4㎝長さに切り、縦薄切りにしてからせん切りに。
[2]それぞれ冷水に3〜5分さらし、サラダスピナーでしっかりと水気をきります。これで野菜のシャキシャキ感が保たれます。
それぞれジッパーつき保存袋に入れ、底の部分から巻き込むようにして余分な空気を抜き、冷蔵庫で保存します。3〜4日で食べきるようにします。
材料の目安
キャベツ 1/2個(400〜500g)
にんじん 大1本
きゅうり 2本
セロリ 1本
大根 8㎝
■せん切り野菜を使ったアレンジレシピ
せん切りキャベツのオムレツ
材料(1人分)
キャベツのせん切り 150g
ロースハムのせん切り 2枚分
卵 2個
塩 こしょう オリーブ油
1 ボウルに卵を割りほぐし、キャベツ、ハム、塩、こしょう各少々を加え、菜箸で空気を入れるようにしてよく混ぜる。
2 フライパン(直径18㎝)にオリーブ油大さじ1を熱して を流し入れ、菜箸で全体をゆっくりかき混ぜながら中火で1〜2分焼き、ふたをして弱火で3分ほど焼く。
3 おいしそうな焼き色がついたら返し、中火で1分焼き、ふたをして弱火で3〜4分焼いて中まで火を通す。
大庭英子/おおばえいこ
身近な材料と普段使いの調味料で作る家庭料理に定評がある。和・洋・中・エスニックのジャンルを超えた幅広いレシピの数々は、どれも自然体のおいしさで、いつ食べても飽きない味わい。みんなのために作る料理だけでなく、最近は自分のために作る料理の時間も愉しむ。
※本記事は『68歳、ひとり暮らし。きょう何食べる?』からの抜粋です。
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料理研究家歴40年の大庭英子さんが、家で「ひとりごはん」を楽しむためのアイデアとレシピを紹介。
ひとり分でも飽きずに手軽に続けられる献立の組み立て方や、ひとりごはんに使いやすい食材の選び方や冷凍法、常備菜などについても幅広く提案している。
写真/邑口京一郎 編集/松原京子 再構成/結城 歩