【高山なおみさんの日々ごはんvol.1】毎日ごはんを作り、洗濯をする、日常が大きな支えに

高山なおみ プロフィール

料理家・高山なおみさんが自身のウェブサイト「ふくう食堂」に綴る日記を収録した、人気エッセイシリーズ『帰ってきた 日々ごはん』。2002年に『日々ごはん①』の日記がスタートし、神戸に拠点を移した4年目の夏から冬にかけての日記を綴った最新刊『帰ってきた 日々ごはん12』で24冊目。今年で日記を書きはじめて20年を迎えました。

静岡県に暮らす90歳の母親との別れ、生きることと死ぬことについて綴った本書から、3回に渡って日記の一部をご紹介。何気ない日常の出来事やおいしそうな食事の記録、心の動きを感じたままに書き留めた高山さんの文章は、鮮やかに情景を写し出し、きっと心に響く言葉が見つかります。

 


■2019年8月7日(水)の日記より


蝉が鳴いている。
今日はきのうに比べたら、ずいぶん涼しい気がする。
朝ごはんを食べ、パソコンにかじりついて、『帰ってきた 日々ごはん⑥』の粗校正の続き。
神戸に引っ越してきた年の、六月から十二月の日記だ。
このころの私は、なんだか力んでいる。
少し恥ずかしい。
どきどきしているからか、すぐに有頂天になったり、元気がなくなったり。
でも、あのときは本当に無我夢中だった。
見たこと、聞いたこと、起こったことにいちいち驚き、すべてを吸収しようとしていたんだから仕方がない。

日々ごはん 2019年8月

集中が切れると、水色のワンピースを縫った。
今はまだ、縁かがりのブランケットステッチを、延々とやっている。
洗濯物をとり込もうと二階に上がったら、蜂が迷い込んでいた。
出口が分からなくなって、網戸の上を往ったり来たり。
布でふんわりくるんで、窓の外でふったら、飛んでいった。
私、蜂を逃がすのがうまくなったかも。

それにしても海が青い。
空のまん中にには、白い半月(少し欠けているけど)。
今は六時、ヒグラシが鳴いている。
空気がヒンヤリしている。
山の空気だ。
神戸に越してきて、四度目の夏。
私は知らないうちに、心が丈夫になったのかもしれない。

日々ごはん 8月の日記
『帰ってきた日々ごはん12』アルバムページ(2019年8月)より

夜ごはんは、四色丼(鶏そぼろ、祝島のひじき煮、いり卵、人参塩もみのごま和え)、蕪の葉の辛子和え、お吸いもの(干し椎茸)。

風呂上がり、二階の窓から月が見えた。
半月。
母が亡くなった日、病院の駐車場から見た月も、こんなだった。
そうか。
あれからもう、ひと月がたとうとしているのか。

※本記事は『帰ってきた 日々ごはん12』(アノニマ・スタジオ刊)からの抜粋です。

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プロフィール写真/枦木功 再構成/赤木真弓

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