義母の完璧な終活を見習い、暮らしをスリム化【60代山岡まさえさんのダウンサイジング記・前編】

山岡まさえ

シンプルでミニマムな暮らしが注目されています。年の区切りのこのタイミングで、暮らしの「ダウンサイジング」を考えてみませんか?お気に入りだけが並んだクローゼット、必要なものをさっと取り出せる棚……。ものに縛られず、過去に捉われず、軽やかに生きる二人の女性に話を伺いました。

ひとり目は、60代のシンプルな暮らしとカジュアルファッションをInstagramで発信し、人気を集めている山岡まさえさんのストーリー。主婦から45歳で起業し、現在は「グルーデコ®」「グルー継ぎ®」というハンドワークの講師を育成する一般社団法人日本グルーデコ協会の代表理事を務めています。

 

子が巣立った後の我が家は、サイズを小さくものを少なく

この夏、還暦を迎えた山岡まさえさん。主婦から起業し社長となり、子育てを卒業し、親を見送り……。いくつものライフステージを経て、「いまが一番、暮らしは快適!」と断言します。

ここは大阪の中心街。昔からビジネスの要の地として栄え、国の重要文化財に指定された古い建物も多く残る、歴史と文化の息づく街です。そんな大都会のマンションに引っ越してきたのは、いまから6年前のこと。ふたりの息子は独立して実家を離れ、夫婦ふたり暮らしになるタイミングでした。

小さなバスケットにハンカチを収納。「いただきものなどで、前は引き出しいっぱいに持っていましたが、いまはこのかごに入るだけに。すべてに愛着が持てています」。

「前の家もマンションでしたが130平米で3LDK。息子たちが大学生になり、私の仕事もどんどんと忙しくなり、家族全体が『自分の人生を
歩み始めた』時期でした」

そんな人生の「拡大期」が過ぎ、これからは夫婦ふたりの落ち着いた暮らしに……。そこで思い切って住まいを小さくすることとしました。130平米から85平米へ、45平米のダウンサイジング。サイズこそ小さくなりましたが、どこに行くにも何をするにも便利な立地で、60代を迎える夫婦にとって至極快適。暮らしの無駄が減りました。

山岡まさえの思いでの箱

息子ふたりのアルバムは2年かけて、この箱に入るだけに厳選。「写真は1年間につき12枚と決めました」

「息子ふたりには、もうあなたたちの部屋はないからねと言ったんです。キッチンも小さく、収納も最低限に。新しい人生のフェーズに入るタイミグの暮らし変えでした」
山岡さんのダウンサイジングの後押しをしたのは、家族形態の変化だけではありません。もうひとつ大きなきっかけがありました。

「いまから10年ほど前、義母が亡くなりました。そのときに、本当に驚くほどすっきりと持ち物を整理して逝ったんですね」。食器棚には日々使う器だけ、タンスの中の衣類も最低限。片付けは呆気ないくらい簡単に終わったそうです。

「終活」を完璧に整え 亡くなった義母を手本に。

「義母には息子が3人いて、遺品整理などは自ずと嫁が中心になりますよね。ものがいっぱいだったら、義理の娘である私たちには、捨てる捨てないのジャッジもしかねるし、負担だったと思うんです。でも、そのときは一切そういうことがなくて。嫁同士で『ありがたいね』と言い合ったものです。見事に人生を整理して旅立っていった義母はすごいな、ってすごく尊敬をしました」。そして、自身も男の子ふたりの母である山岡さんは、我が身に置き換えこう思います。

山岡まさえ

愛犬のバンビとくつろぐ。手前のカウチチェアは夫の定位置。壁の花の絵は、友人のジュエリーアーティスト・片山優子さん作。

「お嫁さんの負担になるようなことはしたくない。私も義母のように暮らしをコンパクトにしておこう」

そこから、ダウンサイジング熱にエンジンがかかりました。いったん意識し始めると、ものとの関係性はドライに厳しくなっていきます。

山岡まさえのハンカチのかご

小さなバスケットにハンカチを収納。「いただきものなどで、前は引き出しいっぱいに持っていましたが、いまはこのかごに入るだけに。すべてに愛着が持てています」。

ダウンサイジング年表

山岡まさえさんの「ダウンサイジング」のこれまで

2007 年/42歳頃
大阪府・北摂エリアに150 平米・4LDKの戸建を新築。両親の介護や見送り、子どもたちの受験など、家族のために全力で動いていた時期。

2010 年/45歳
次男が中1のときの個人面談で「子離れをしないと、お子さんがダメになりますよ」と言われたことを機に、主婦から起業。趣味でやっていたハンドメイドの教室を立ち上げ。

2013 年/48歳頃
大阪市船場エリアのマンション(130平米・3LDK)へ。息子たちが大学生となり、家族全体が「それぞれの人生を歩みはじめた」タイミング。仕事も一番忙しく、家と会社が近いことを最優先に。

2014 年/49歳
義母が亡くなる。終活をしっかりしていたため、遺された家族の負担がほとんどなく、そのときに自らもダウンサイジングの必要性を感じる。

2019 年/54歳
息子ふたりの独立を機に85平米の2LDKのマンションに引っ越し。マイナス45㎡のダウンサイジング。それに伴い、持ち物を「本当に必要なもの」だけに厳選。

2024 年/59歳
クローゼットの整理をして、洋服を3分の1に減らす。下着やTシャツなどすべて数えて100 着に。

2025 年/60歳
さらなるダウンサイジングに向けて、リビングの棚を手放す予定。

PROFILE

山岡まさえ/やまおかまさえ

一般社団法人日本グルーデコ協会代表理事 60歳

「グルーデコ®」「グルー継ぎ®」というハンドワークの講師を育成する一般社団法人日本グルーデコ協会代表理事。日々コーディネートや暮らしの気づきを紹介するインスタグラムも人気。Instagram:@yamaokamasae

 

写真 山口健一郎 取材・文 鈴木麻子  『クウネル』2025年11月号掲載

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