人を惹きつける強い詩の言葉にふれて。『積ん読の本』著者、石井千湖さんの3選。【私の読書時間】
著名人の方にクウネル世代におすすめの本を教えてもらう「私の読書時間」。今回は、書評家・石井千湖さんにお話を聞きました。
PROFILE
古今東西の名作から現代詩まで。 豊かな詩の言葉に出合う。
家にはまだ読んでいない本が山ほどあるのに、また買ってしまい、積ん読の本が増えていく。そんな活字中毒者たちを訪ね歩いた著書『積ん読の本』が好評な書評家の石井千湖さん。仕事がら自宅も積ん読の山で、「家にいるときは原稿を書いているか、本を読んでいるかのどちらかです」と笑います。そんな石井さんが今回選んでくれたのは、詩にまつわる3冊。
「詩集を手に取るようになったきっかけは自分の語彙を少しでも豊かにしたいと思ったことと、ブルボン小林さんの著書『ぐっとくる題名』の〝自分たちには言葉が足りない〟という意の一文が印象的だったこと。人を惹きつける強度のある詩の言葉にふれてみたくなりました」
『詩と散策』
ハン・ジョンウォン 訳/橋本智保
リルケ、ボルヘス、金子みすゞら引用される詩人が多彩で、韓国ではベストセラーになった作品。「読むと散歩したくなります。猫の記述が多いのも猫好きの私にはたまりませんでした」。書肆侃侃房
1冊目の『詩と散策』は散策に出かけ、移りゆく季節とともに思い浮かんだ詩を綴った静かで味わい深いエッセイ集です。「韓国では詩人が尊敬され、詩集がベストセラーになるとか。これはエッセイ集ですが、装幀がきれいで、手に取りやすい。美しい文章で、季節ごとの日常を織り交ぜながら、詩の一節に思いを馳せています。いろいろな国の詩人の作品が引用されていて、ブックガイドとしても魅力的。散歩するとき持ち歩いてもいいし、寝る前に1章ずつ読むのもいいですね。
『カッコよくなきゃ、ポエムじゃない! 萌える現代詩入門』
豊﨑由美、広瀬大志
『現代詩手帖』の好評連載が1冊に。著者2人のヘンアイ詩集1ダースなど資料も充実。「私はパンクな橘上さんや言葉の意味から自由な小笠原鳥類さんの作品など読んでみたくなりました」。思潮社
2冊目の『カッコよくなきゃ、ポエムじゃない!』は気鋭の現代詩人と詩を愛する書評家の対談集。難解と敬遠されがちな現代詩について語り尽くします。「詩人の広瀬さんは音楽業界でマーケティングの仕事をされている方で、詩の歴史を詩人のステータスの変遷やビジネスモデルを切り口にまとめているのがユニーク。詩になじみのない人への格好の橋渡しにもなっています。豊﨑さんと評価が分かれる作品もあって、解釈が分かれてもいいんだ、意味がわからなくてもなんだか面白い、カッコイイと思えるならいいんだと気づかせてくれます。J-POPの詞の現代詩への接近や、難解さの笑えるほど詳細な分析など、さまざまな角度から現代詩に迫る1冊です」
『永瀬清子詩集』
永瀬清子 選/谷川俊太郎
詩作品の他、詩と散文の間にある短章という形式の作品、谷川俊太郎との対談、自筆年譜なども収録。「1行目からグッと引き込まれる作品が多い。もっと読まれていい詩人だと思います」。岩波文庫
3冊目は『永瀬清子詩集』。著者は1906年生まれ、1995年没。20世紀を生き抜いた、「現代詩の母」と呼ばれる存在です。「上級学校には行かせてもらえず、親の薦める人と結婚し、戦後は郷里の岡山で農業をしながら詩を書き続けます。制約の多い生活でも精神的には自由で、フェミズムの先駆けのような力強い言葉で人を惹きつけます。詩以外のアフォリズムめいた短い文章も、生活からにじみでた地に足の着いた文章だからか、読むと気持ちを明るくしてくれます。寒さに向かうこれからの季節、磨き抜かれた詩の言葉が、心をあたためてくれるかもしれません。
クウネルchoice 新刊ガイド
『ジェーン・バーキン日記:Munkey Diaries/Post-scriptum』ジェーン・バーキン 監訳/小柳帝
永遠のフレンチミューズ率直で飾らない姿がここに。
11歳から約60年に渡る実際の日記に記憶を書き足した自伝的作品。華やかな出来事も別れの苦しみも子どもへの愛も克明に綴られています。瀟洒な布装本2冊にノートなど特典付き豪華函入り限定生産。河出書房新社 19,800円
『白崎茶会の発酵ごはん』白崎裕子
料理の幅がグンと広がるヘルシーな発酵食レシピ。
予約の取れない料理教室を主宰する著者が大人気の発酵食レシピを紹介。体によくて旨味もアップ、保存もきくと、まさにいいことづくめ。チヂミにボロネーゼ、水餃子と守備範囲の広さも魅力です。マガジンハウス 1,760円
『クウネル』2026年1月号掲載
写真/目黒智子、取材・文/丸山貴未子
SHARE
『クウネル』NO.136掲載
なにしろ「フランスびいき♡」なもので
- 発売日 : 2025年11月19日
- 価格 : 1,080円 (税込)