2020年11月。神奈川・横浜に自身初の実店舗となるコンフィチュール専門店をオープンした違克美さん。50歳、コロナ禍で始めたこの店は、結婚、出産、離婚を経てなお、子供の頃からのお菓子作りへの情熱が衰えなかった彼女の旅の終着点であり、再出発点。そんなお店の誕生秘話を教えていただきました。
違 克美/ちがいかつみ
42歳のとき、コンフィチュールのブランド『旅するコンフィチュール』 を始動。製造の傍ら、レシピ監修やジャム教室講師も。横浜の地産地消に取り組む『濱の料理人』メンバー。
妻として、母としての務めを果たしながら、料理学校で製菓を学び、渡仏してはマルシェに出向き、アパートで菓子を作る日々。そんな中、のめり込んだのが、比較的時間に縛られずに極められるコンフィチュールでした。
「同じ果物でも、品種や産地の違いで、味や食感、合わせる素材も変わってくる。作れば作るほど、奥が深くて。イチゴが安くなる時期になると、何箱も買って車に積んで帰るので、〝領収書、いりますか?〟と聞かれたほどです」
やがて離婚。30代でシングルマザー となった違さんはマルシェへの出品を 機に、これを生業にしよう、と決意。
「2日間で100個を売ったことが自信になりました。このとき、どんなコンフィチュールを作りたいのか、改めて考えました。辿り着いた答えが、自分がフランス菓子を食べているときのわくわく感を小さな瓶に詰めること。
見た目の美しさ、蓋を開けた瞬間の香り、果肉がゴロゴロ入った中身の驚き。 そのコンセプトは、今も変わりません。 農家さんから届いた果物を食べてみて、どう加工したら、そうなるのか。日本のものは生食でもおいしいので、みずみずしさを活かして、作っています」
それが、実店舗のオープンを後押しすることに。オンラインでの個人注文が急増し、配送作業を行う部屋を探していたところ、コロナ禍で工房近くのビ ルに空きが出たのです。
「思えば、個人のお客様をお迎えする環境が整っていなかったなぁと、思い切ってお店にしました。製造過程でいちばん大切にしているのが、農家さんとのやりとりなので、今後は、不揃いの果物などを買い取って、タルトやゼリーも作って。
近所の方がふらっと立ち寄っても楽しめるお店にできたら、と。やっぱり、お店を訪れるわくわく感は、かけがえのないものですから」
SHOP DATA
住:神奈川県横浜市中区相生町2-52 泰生ポーチ203
電:なし
営:12:00〜18:00(木曜〜19:00)
休:日、月曜
info@tabisuru-conf.jp
写真/柳原久子 取材・文/高橋敬恵子、齋藤優子、船山直子 再編集/久保田千晴