【福島びいき 酒井順子さんの 旅リポートvol.2】発見だらけ!の野山ゆきとおみやげ選び。

福島びいき 酒井順子

エッセイストの酒井順子さんが「好きな街」としてあげる、福島市。

5月20日発行『クウネル』本誌7月号の「私の贔屓の店」ページの取材で訪れた足で、2年半ぶりに福島を旅した酒井さん。いつも行く「あそこ」に加えて、噂に聞いたスポットを訪ねたり、ピクニックしたり。前回の福島旅vol.1シティ編に引き続き、2回目のレポートをお届けします。


絶景過ぎる!
街のシンボル信夫山でピクニック


本誌取材でお世話になった皆さんから、信夫山(しのぶやま)でピクニックしませんか?と誘って頂き翌朝集合、市の中心部から車で10分程度で信夫山へ到着です。

福島市民にとってはふるさとの象徴である信夫山は三山からなり、最高峰の標高は275メートル。古くは修験の山でもあったそうですが、いまは市民の行楽の場となっています。烏ヶ崎という展望台をめざし、駐車場から5分ほど歩いて到着。

吾妻山 安達太良山 烏ヶ崎展望 風景 絶景
烏ヶ崎展望デッキで絶景を堪能。雪をかぶる山は向かって右が吾妻山、左が安達太良山。

「わわっ。福島に何度来ていても初めての、すごい光景です。街が一望できて、その向こうには白い雪をかぶった山、そして真っ青な空! 空気が澄んでいる朝だから、よけいにきれいなんですね」

眼下にはフラットな福島市街が広がっていて、東北新幹線と山形新幹線(奥羽本線)の線路が分岐する所も見え、山の下を東北新幹線線路がくぐっているのもわかります。遠くに吾妻、安達太良の連山!ふもとから登ってくる人も犬の散歩を兼ねる人も、続々と…。我らピクニックチームは、手際もよろしく朝食の準備にとりかかります。

「街の中にいても、少し足を伸ばせば自然が身近にあるのが羨ましい。こんな絶景を眺めながら朝食を食べられるとは、贅沢の極み! みなさん仕事に行く前に連れて来て下さり、テキパキ準備して一緒に朝食を食べてから、ささっと出勤していきました、なんてさわやかな朝!」

信夫山は福島市の中心部に近く、アクセスとしては旅行者がぶらりと来るのにも実はハードルは高くない場所です。

ピクニック 信夫山 
ホットサンド作りを手伝う。
ピクニック 信夫山 道具 
ピクニック 信夫山 ごはん 
/

福島県では昔からポピュラーとされるパン×あん×バターや、パン×熱々チーズ×ハムの組み合わせが「たまらない」と、なんとも幸せな気分になった酒井さんでした。

信夫山 信夫山天満宮 福島 花見
ふもとの信夫山天満宮。隣接して信夫山公園があり周辺は桜の季節、花見客でにぎわう。

花見もぬかりなく満喫です。


今回はたまたま、桜のシーズンでもありました。

福島市内には花見山という県内でもっとも有名な花見のメッカがあります。花き農家所有のひと山が花の鑑賞のために一般開放されていて、特に春の花のにぎわいは見事だそう。

「すごい人出のようなので、山の中まで入るのは難しいかもしれませんが、近くまで行って見よう!と」

花見山の賑わいを迂回して、花見山入口から少し奥まった高台を目指すことに。

そこに地元の人もあまり知らない花の絶景がありました。茶屋沼公園というところ。遠くには残雪をかぶった吾妻山が望め、ベンチも遊歩道も整っています。

茶屋沼公園で桜の前に立つ酒井順子さん

「人が少なくて、のんびりとお花を楽しめます。市内からの道中、民家の庭の花木や里山の光景もきれいでした。東北は、たくさんの花が一斉に咲く感じがありますよね。東京とは違って、木ものびのびと枝を伸ばしています」

茶屋沼公園 花見 福島 風景
茶屋沼公園。花と山がさりげなく同じフレームに。

「私は枝垂桜が好きなのですが、枝垂れたいだけ枝垂れている様子が、見ていて気持ちがいい……! 空の青、山の残雪の白、桜の薄ピンク、レンギョウの黄色と、きれいな色しか目に入ってきません」

里の春 風景 福島
里の春

初体験、未確認を静かに堪能
「かたくりの里」「UFOの里」

かたくりの里

大人になるにつれて花好きになってきたという酒井さん。東京辺りでは簡単に見ることができない花が咲いていると聞いて、車で連れて行ってもらいました。

かたくりは主に山地の落葉樹の林で咲く山野草。福島県内では有名な群生地もいくつかあるようですが、福島市内松川の一角にも群生地があるということで、行ってみることに。

田園地帯の真ん中にのぼりが一本。田んぼの脇の小高い斜面に群落がありました。

かたくり群生 自然 福島
かたくり群生
かたくり群生 自然 花
かたくり群生 自然 花 撮影
/

「すでに夕方なので花びらが閉じ気味ですが、アンバー気味の光に薄紫が映えますね。これは貴重な体験!」

満開時、真昼ならば花びらは反り返るように大きくのびのび咲いていたはず。おとなしめの咲き具合とはいえ、ファーストコンタクトとして静かに楽しんだ酒井さんです。

UFOの里

旧奥州街道沿いに位置している松川の里、市街からは離れた田園地帯です。かたくりの里にてもかなり日は傾いていましたが、そのあと近くに公営の「UFOの里」と名のついた場所があると言うことでせっかくだし面白そう!となり、寄り道を決行。

UFOの里 風景 夕方

名前は個性的ですが、家族で楽しめる景色のいい公園の風情です。

「UFOの飛来が目撃されているらしいですよ。念をこめて呼んでみようかな」

ということでしばらく待ってみたのですが、現れず。すでに山の端は赤く染まりあたりは薄暗くなってきたので、長居は断念しました。

「UFOとのコンタクトはできずとも、空が素晴らしく開けていて、何かを感じるところです。いつかは未知なるものと遭遇してみたい!」


おみやげに食べもの、どっさり。


お土産 福島 菓子
酒井さんのトートバッグ、ふくれた。

派手ではないけれど、きちんとおいしいものが多い……福島の法則です。酒井さんの「よく買って帰る」いくつかのレギュラーお土産をご紹介。

やさしくほの甘、甘納豆/ 

うろこやはvol1.で訪れた『Books&Cafeコトウ』の斜め前にある甘納豆専門店。ご主人も「特に福島の特別な製法ではないですけれど」とおっしゃるけれど、こちらの甘納豆は、福島市の友人たちも愛好する手作りお菓子。酒井さんも…

「何度か買っています。素材の味が生かされた甘さが疲れたからだに浸みます。甘さほどほど。コトウの前でコーヒーを飲みながら、さっそく1袋開けてつまんでしまいました」

うろこや 福島 甘納豆専門店
「うろこや」の釜焚き甘納豆。青えんどうと花豆。

『福島県観光物産館』と、JR福島駅駅ビル『ピボット』で、県内のおみやげはたくさん手に入ります。福島市周辺産にこだわって選び、さらにJA運営の「農産物直売所 ここら」まで足を延ばして、充実した買い物ができました。

凍み餅と凍み豆腐で東北と福島の食文化を学ぶ/ 

「東北の食文化の境地の一つは、〈凍み 〉 もの。凍み餅、凍み豆腐とも、くせになる味わいです」

凍み餅 凍み豆腐 お菓子 お土産
上は凍み餅、下、凍み豆腐 いろいろなメーカーの商品あり。

凍み餅は厳寒の戸外に餅をつるし凍っては解けを繰り返す間に水分を抜き乾燥させる、餅のナチュラルな二次形態。東北など寒冷地の保存食文化として今も受け継がれています。福島ではごんぼっぱと言われるヤマゴボウ (オヤマボクチ) やヨモギを入れた草餅タイプが多く作られています。

「今回は福島ではごんぼっぱの凍み餅を買いました。水でゆっくり戻してから、フライパンでバターで焼き、砂糖醤油で食べるのが好き。戻すと2割は膨れます」

戻した餅は網で焼くより、酒井さん式にフライパンで、というのが食べやすくメジャーのようです。

凍み豆腐も福島市郊外に産地が 

凍み豆腐は凍り豆腐、高野豆腐とも基本は同じ、豆腐の乾燥保存食品。

やはり寒冷地帯の風土で生み出された伝統食文化です。福島市郊外の立子山の名産。良質のたんぱく質をとれる食品でナチュラル、とクウネル世代に嬉しい食品!

「煮物や、味噌汁の具にしています。豆腐が冷蔵庫になくても手軽に使えて便利。藁でくくられているのが風情ありますよね。」

ノスタルジックな包装が特徴

ねっとりおいしいラジウム玉子

ラジウム玉子 温泉卵 お土産

ラジウム玉子は福島市の奥座敷と言われる飯坂温泉が発祥地とされる温泉卵です。県民のソウルフードでもあり、温泉土産を超えたパワーがあります。

「よく買っています。どこの、という指定はないけれど」

個装になっているので、多めに買って分けることもできるのが便利なところ。ノスタルジックなパッケージが多いので、ジャケ買いしても良さそう。福島周辺ではさまざまなお土産どころやスーパーなどで入手可能。

「ねっとり感が独特です。ごはんやうどんにのせて食べるのが好きで、10個入りを買ってもすぐになくなります」

 \凍み餅のドーナツ、発見

定番おみやげを確保した後に発見したのが、凍み餅を衣に包んであげたスナック、「凍天(しみてん)」。福島県民から絶大な人気を集めていたおやつでしたが、3年前にいったん途絶えていたのを、なんとか復活させたいと福島市のメーカーが以前のメーカーから製造法を受け継ぎ、同じクオリティで提供することに漕ぎつけたのだそうです。

緑の更に乗った木乃幡の凍天
木乃幡の凍天はヨモギの凍み餅をふわっとしたドーナツ生地で包み揚げてある。あんこを挟んだタイプも。写真提供:キノシタコーポレーション

ともかく食べてみたいと、駅ビルで帰り際に購入。新幹線でアツアツのままパクッと! 少々バタバタで、撮影さえ忘れていました。

「アメリカンドッグタイプの衣の中に餅、という和魂洋才的おやつ。ダブル炭水化物と油の組み合わせが、悪魔的な美味しさです~。少し置いてから食べるのもよさそうです。帰りの新幹線の定番おやつに決定!」


次の旅への意欲もふつふつ


本誌の取材ついでの旅とはいえ、福島のいいところを駆け抜けた酒井さん。

「福島市はいわゆる観光地ではありませんが、だからこそ落ち着いて地元の良さを知ることができる、まさに大人向きの街。ゆっくり歩いてほしいですね。 今回は、温泉に行けなかったのが残念でしたが……高湯温泉、野地温泉など、福島駅からアクセスするのが便利なお気に入り温泉も多いので、この次はぜったいに浸かります!」

次の旅へのモチベーションもばっちりです。

酒井さんの福島旅vol.1シティ編『クウネル』7月号の「贔屓の店」ページもぜひ!

写真/富永よしえ、取材・文・写真/原千香子、取材協力/わらがやしほ

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