定年や子どもの独立を機にリフォームを考えているけれど、何から始めていいかわからない……、そんなマチュア世代のお悩みを解決すべく、自らも多くのリフォームを手掛けている一級建築士の水越美枝子さんに、事前に知っておきたいポイントをアドバイスいただきました。
水越美枝子/みずこしみえこ
一級建築士事務所『アトリエサラ』共同主宰。新築はもとより、2 0年前から多くのリフォームを手がけ、『理想の暮らしをかなえる50代からのリフォーム』(大和書房)など著書多数。
Q1.まずは何を考えるべきでしょうか?
まずは「この先、どんな暮らしをしたいのか」を考えることから始めてみましょう。たとえば、夫婦の場合なら、夫との時間を楽しみたいのか、それとも適度にすれ違いながら生活したいのかなど。
その上で、クウネル世代にとってはシニアになったときのことを見据えておくことも必要です。終の棲家にしたいなら、いざとなれば階段を使わずに生活できるプランや、室内の移動が快適なプランが浮かんでくるでしょう。
いずれは介護施設などへの転居も考えているなら、古い設備を新しくするだけでいいかもしれません。
リフォーム例1:壁を取り払って動きやすいキッチンに。
「夫と上手に“すれ違う”には、 自分のことは自分でできる住まいにしておくといい。キッチンのリフォームは糸口になります」(水越美枝子さん)
Q2.予算の考え方、 優先順位の決め方は?
リフォームでは自分の予算を担当者にきちんと伝え、その範囲でできること、できないことを早めにすり合わせした上で進めるとスムーズです。
優先順位は、自分が一番気になっていることから。壊れそうな設備などは生活の質を下げるので、やはり優先的に交換が必要でしょう。
また、部屋が片付かないという漠然とした悩みでも担当者に話してみると、収納の位置や動線の問題が浮かび上がることも。自分では気づかなかった潜在的な問題を予算内で解決できると、満足のいくリフォームになります。気になっていることはどんどん伝えましょう。
リフォーム例2:玄関クローゼットが動線をスムーズにする。
「玄関の近くにクローゼットを作ってコートやバッグなどを収納できるようにしておくと、ラクに片付けられる家になります」。
Q3.どこに依頼するか、探し方のポイントは?
どの程度の改装をするかによって依頼先の選択肢は変わります。場所を変えずにキッチンやお風呂などの設備を入れ替えるのであれば、地元で評判のいい工務店に頼む方法も。
間取りや動線を変えるのであれば、図面が必要になるので設計事務所、設計士のいるリフォーム会社、ハウスメーカーなどがいいでしょう。
これまで手がけた事例の写真や意図などを、ホームページに丁寧にまとめているところは信頼度が高いと思います。マンションでは配管など複雑な面があるので事例が多いと安心です。
リフォーム例3:一段上げた和の寝室で空間を有効利用
「リビングの脇に寝室が欲しいという要望があり、多目的に使える和室を提案しました」。
写真/永野佳世 取材・文/石毛幸子 再編集/久保田千晴