人生100年時代と言われる今。エッセイストとして活躍しながら、50歳目前で設計事務所での建築・空間プロデュースという新しい仕事を始めた広瀬裕子さん。昨年発売された著書『55歳、大人のまんなか』(PHP研究所)では、「もう55歳」と「まだ55歳」を行き来する「55歳の今」を描き、同世代の女性を中心に共感を集めています。
「55歳は50代の楽しみと60歳への準備が重なる年齢」と語る広瀬さん。どうすればその期間を気持ちよくすごせるか、かろやかにいられるか。著書からそのヒントをいただきます。
3回目の今回は、広瀬さんとあたらしい鏡のお話です。
広瀬裕子/ひろせゆうこ
エッセイスト、編集者、設計事務所共同代表、other:代表。「衣食住」を中心に、こころと体、空間、日々の時間、食べるもの、使うもの、目に見えるものも、見えないものも、大切に思い、表現している。現在は設計事務所の共同代表としてホテルや店舗、レストランなどの空間設計のディレクションにも携わる。主な著書に『できることから始めています』(文藝春秋)、『50歳からはじまる、新しい暮らし』(PHP研究所)など多数。
インスタグラム:@yukohirose19
55歳の鏡
「こういうものも必要になるんだ」とおどろきとあらたな思いを持つことがあります。
ホテルに泊まるとバスルームに拡大鏡が置かれていたり壁づけされているところがありま す。以前は使うことがありませんでした。「どうしてここに?」と思っていたこともあります。でも、いまは、あるとうれしいもののひとつになりました。
ホテル同様、家にも拡大鏡を置いています。 55歳になり半年すぎた時必要になったのです。 1年前はなくても問題なかった。でも、ある時から必需品になる。歳を重ねるとそんなこ とが起こります。拡大鏡を使うようになりわかったのは「全然見えていなかった」ということでした。
選んだものはコンパクトなサイズのライトつきの10 倍タイプ。売り場でその鏡をのぞいて 見た時、笑ってしまいました。「わあ。 55歳」と。
年齢的に近いところが見えづらくなっているのは、仕方のないことです。でも、それと見えていないことは別問題だとその時思いました。見えないからというのはある意味、言い訳 だったのかもしれません。このあたりのバランスはむずかしいですね。受けいれて気にしないようにしていけばいいのか、工夫ややり方で保てることがいいのか。これからはそういう場面が多くなり、その都 度「どちらがいいのか」と考えるのだと思います。
ただ、鏡に関しては、わたしは拡大鏡を使うことを選んでよかったと思っています。何より 55年生きてきたいまの自分を知ることができるのですから。
撮影 加藤新作
※本記事は『55歳、大人のまんなか』(PHP研究所)からの抜粋です
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「もうまんなか」「まだまんなか」。往き来する思いのなかで、自分らしい風景のなかにいるために、55歳を迎えた著者・広瀬裕子さんが日々選択していることを豊富なカラー写真と洒脱な文章で綴った一冊。『55歳、大人のまんなか』(PHP研究所)