これまで様々な仕事を器用にこなし、転職を繰り返してきたセリーヌさん。でも出産を機に、心持ちにも変化が……。ようやく巡り合った今の仕事が、まさに天職だと語ります。
39歳で出産し、その後シングルマザーになったセリーヌさん。
「子供の父親とは3年で別れてしまったの。シングルマザーになったこともあり、安定した職業を求め、子育てしながら独学で司書になる勉強をしたんです。国家試験にも合格しなければいけないので、子育てをしながらの勉強など、かなり努力が必要でした」
セリーヌさんの20代は、バーテンダーとして働く日々でした。不規則な夜の仕事では、家族や恋人と生活が真逆。その後は出版社で編集助手として校正をしたり、取材をし、フォトグラファーの恋人もいたそうです。
「その後、空港のPR業務などオフィスワークをしていたんですが、毎日が同じルーティーンワークで飽きてしまった頃、ちょうど出会いがあり、 39歳で子供を産んだんです」
自身の性格を飽きっぽいかもと話すセリーヌさん。仕事を覚えるのも早く、数年するともうやり終えたような気分になり、結果、転職を繰り返していたのだとか。
「子供を持つと心が安定を求め、いったんは司書として落ち着きました。でもいま一度チャレンジをと考え、大学で幼稚園の教論になるための勉強を始めたんです」
周りからは、子供がいながら50歳での大学入学は無謀だと言われました。
「たしかに生活はとても大変です。でも実家の父がすごく応援してくれました。そして10代、20代の若い同級生たちに『自分が50 歳になることなんて想像できないけれど、セリーヌを見ていると希望が持てる』と言われたのが、とても嬉しくて」
今は幼稚園で教育実習中。子供と過ごす時間は素晴らしく、忙しい毎日ながらアイデアも次々とわいてくるそう。
「子供に数字を教えたり、歌を歌ったり、新しい課題を見つけ、子供のための新しいプログラムを考えることに、とてもやりがいを感じています」
教員試験にも見事パス。自分の一生の仕事にしようと心に決めています。そしてプライベートでは、「今は息子との暮らしが気に入っているので、誰かと同居するつもりはありません。もちろん恋愛はその都度していて、一番若い恋人は25歳も年下でした。今後は再婚とかではなく、男性とは少し距離を保ちながら、恋愛をしていきたいと考えています」
セリーヌ・ハベールさん(51)
Celine Habert/幼稚園教諭。13区の一軒家に12歳の息子と暮らす。編集助手、オフィスワーク、児童図書館の司書を経て、50歳で大学へ。現在は幼稚園で教育実習をしながら、本採用を目指して勉強中。
『ku:nel』2020年1月号掲載
写真 篠 あゆみ/コーディネート 石坂紀子/編集・文 今井 恵