世の中が大きく変わりそうなときこそ、自分を見つめる絶好の機会。そんな時、本や映画を嗜むのはいかがでしょうか。心に響く映像や言葉を手がかりに 今の自分を知り、これからを生きる準備をしたいものです。今回はフォトグラファーである中川正子さんおすすめの「書評本」3選をご紹介します。書評本はただのブックガイドと侮るべからず。読めば読むほど本の世界が広がる作品達をご覧ください。
ふと読み返す、手放せない愛読書 。
ここ数年は予想外の状況の中、普段に比べ本を手に取った人も多いのでは。偶然、目について、あるいはいつものように読み返して、やっぱり手元に置いておきたくなるお気に入り。6人の方にそんな座右の書を紹介していただきます。
『打ちのめされるようなすごい本』
米原万里
ロシア語同時通訳者の著者が、1995年から、がんで逝く2006年まで綴った全書評を収録。1日平均7冊の読書を20年続けた本好きだけに、ジャンルは縦横無尽。優れた書評であり、見事な社会時評にもなっている。文藝春秋
『趣味は読書。』
斎藤美奈子
切れ味の鋭さに定評のある文芸評論家が、「ベストセラーって誰が読んでいるの?」と いう素朴な疑問から、49冊のベストセラーを読み倒し、バッサバッサと切り倒す。独自の読書人の分類とベストセラーの法則も痛快。平凡社
『ななめ読み日記』
千葉敦子
乳がんを宣告されたジャーナリストが、残された時間を意識しながら、1982年4月1日から綴った1年間の読書日記。「読書とは、その本をただ読むだけではなく、そこから自己の思想を広げる行為をさすもの」と著者。同時代社
読書の喜びと学びの必要を教えてくれる書評本。
著作を憧れと興奮とともに読んでき た3名による書評本に手が伸びた外出 自粛期間。敬愛する彼女たちが舌鋒鋭く評する書物から読書リストを再構築しようという、人任せで怠惰な動機によって。結果、私はこの3冊自体を、 読書ガイドとしてでなく、独立した作品としてどっぷりと楽しんでしまった。
〝横綱相撲〟という言葉が浮かぶ。正面から相手を受け止め、圧倒的な力の差を見せつけ勝つことを意味するその語は、本来勝ち負けではない書評という行為を表すに全く不適切であることは認識している。けれど、彼女たちが体をかわしたり肩透かしをすることなく、がっちりとそれぞれの書物を受け止め、真正面から体当たりで鮮やかに返す姿に、圧倒的な試合を観たような爽快な読後感を持った。
著者の深い知見と思想が、対象と衝突する際に惜しみなく光り、読書の喜びと終わるころのない学びの必要を教えてくれる。
中川正子/なかがわまさこ
46歳・フォトグラファー
横浜生まれ。雑誌、広告、アーティスト写真、書籍など幅広く活躍。オンラインストアではオリジナルプリントや写真集を販売中。
https://masako-nakagawa. stores.jp/
『ku:nel』2020年9月号掲載
写真 中川正子、加瀬健太郎
編集 和田紀子、ミヤケマイ、友永文博
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