パリでの暮らしが55年目を迎えるデザイナーの弓・シャローさん。その生活はセンスに溢れるものでした。フランス人のお宅に伺ったとき彼らの美意識の高い暮らしに驚き、そこから多くのことを学んだといいます。今回はそんな弓さんによるフランス式暮らしの整え方を紹介していきます。
Living Room
弓さんが暮らすヴァンヴ市には、人気の蚤の市がありま す。「蚤の市が大好きで、週末に夫とよく行きました」。 焦らず、気に入ったものがあると購入したそう。「肘掛け椅子3脚と長椅子、丸テーブルをまず買い、自分たちで生地の張り替えもしました。特に気に入っているのは 肘掛け椅子側面のcannageと呼ばれる籐の網部分。この雰囲気に合わせ、他の家具も揃えた感があります」
元航空技師の夫 Claude(クロード) さん、デザイナーの弓さん。ジャンルは違えども手先が器用、物を作ったり整えたりすることが好き、体を動かす ことをいとわない、そんな二人が暮らすのはパリ近郊のヴァンヴ市の高台にあるアパルトマンです。
「Claude の会社に近くて、地下鉄の駅も近くて、家の前が開けていて、広 いテラスがあって……そんな条件に見 合う物件はなかなか見つからず、3年 間ほど探していました。そしてつい に、高台の南向き、大きな窓があって 明るく、広々としたテラス、南側には 緑濃い森が広がり、北側にはパリが一望できる、このアパルトマンと出合いました。1985年のことです」。弓さんは1966年に渡仏し、フランス人の暮らしぶりを知ることに。 「フランス人のお宅にうかがって驚いたのが、どの家もきちんと片付き、とにかくきれいに整えられているということでした。圧倒的に物が少なくて、 目に見える空間すべて美しい。 その理由を家の人に聞くと、雑多な 物などが目に見えないよう、すべて収納していると。必要最小限の気に入った物で暮らし、余分な物は持たない、 買わない。そして、手入れをし、使い勝手がいいように自分なりに手を加え、長年使い続けている。そんなフランス人の美意識の高い暮らしから、多くのことを学び、私も取り入れるようになりました」
Green Coner
リビングの一角に大きな葉が目を引く観 葉植物が、立派な箱の上に愛犬達の写真 と共に飾られています。「この大箱はCoffreと言って、昔、船用の荷物を入れて いたものです。素材は楠で虫が付かず、 特に海軍で使用されていたそう。この中には、趣味のお裁縫の残り布や、未だに 捨て難き服や靴を入れたり…と、私の未練箱に」。収納の美観にこだわる、これぞフランス流!
Bar Coner
「夫の仕事で’68年~’69年の1年間パキスタンに暮らしていました。近所に木に金属をはめ込む職人さんがいて、何か注文したく、フランスはアペリティフの機 会が多いので瓶やコースターを収納でき るものを」と、弓さん自らが寸法入りの絵を描きオーダーした、写真手前の家具。 「とても便利で今でも重宝しています」
ゆみしゃろー
81歳 デザイナー
1966年に渡仏。仏 人航空エンジニアと結婚。『アンアン』など でイラストレーター、 ジャーナリストとして 活躍。著書に『100歳までパリジェンヌ! いつも機嫌よくおしゃれに!』(扶桑社)など。
ku:nel 2020年9月号掲載
撮影協力 JC Charrawt、弓・シャロー / 取材・文 河田実紀
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