俳優・中嶋朋子さんが大切にする『星の王子さま』の言葉。「読むたびに新たな気づきがあります」
最初に出版されて80年余り。150とも160とも言われる言語に訳され、聖書の次に読まれているとも称される『星の王子さま』。その魅力を中嶋朋子さんが語ります。
お話を伺った方
中嶋朋子/なかじま・ともこ
俳優
東京都出身。俳優。唯一無二の存在感で、国内外の演出家からの厚い信頼を得る。俳優業の他にもナレーションや朗読、執筆活動にも根強いファンを持つ。近年の主な出演作品は、ドラマ『ザ・ロイヤルファミリー』、『シリーズ横溝正史短編集Ⅳ』など。
『星の王子さま』とサン゠テグジュペリ
物語の主人公である飛行士と王子さま両方に作者であるサン゠テグジュペリの自画像が投影されていると言われています。テグジュペリは1900年フランスのリヨン生まれ。幼いころから空への憧れを強く抱き、長じて郵便を飛行機で輸送するパイロットの職を得ます。そのときのリビア砂漠での不時着、生死をさまよう体験が本作のベースになったのです。その後、連合軍のパイロットとして偵察飛行中の1944年に行方不明に。44歳のときでした。
『星の王子さま』のほかに『人間の土地』、『夜間飛行』などの作品を遺したフランスを代表する作家です。
『星の王子さま』を書いた後、サン゠テグジュペリは飛行中に行方不明となり、完成された作品としては、本作が最後となった。これほどの歴史的なベストセラーになったことを著者は知らずにこの世を去ったのである。
「大好きだから旅先へ持っていってなくしてしまったり、人にあげちゃったりして、何冊も買いました。訳者の違う版を買ったり、関連本も読みましたね」
繰り返し読んでいる本だけれど、読むたびに新たな気づきがある、と中嶋さんは言います。
「今回も読み直したら、キツネと王子さまの会話の中で、王子さまがバラを大切に感じるのは、世話をするという『暇つぶし』をしたからだと、キツネが語るところにハッとしました。バラの世話をするのは、自分が好きでやったこと。世話してあげるとか、してもらうとかではない。ちょっとした『暇つぶし』なんだと言うんです。でも、その『暇つぶし』をしたからこそ、大切に感じるんだと」
引用は『オリジナル版 星の王子さま』(サン=テグジュペリ作、内藤 濯訳、岩波書店刊より)
大切に思う相手に働きかけることは、相手から感謝やお礼を期待するのではなく、自分が楽しんでやった「暇つぶし」、そんな風に思えたら、「そもそも戦争なんて起きないじゃん、って思ったんです。取った取られた、やったやってあげたは、どうでもよくなるのにな、って」
ふとしたときに手を伸ばして、ページをめくれば、新たな発見がある。約80年前に生まれた物語にはそんな力がつまっているのです。
こちらは1993年に発行され、フランスの通貨がフランからユーロへ切り替わる前の、最後の50フラン紙幣として流通したもの。サン゠テグジュペリの肖像のほか、王子さまや物語に出てくるへびの挿絵もモチーフに。作品の人気の高さを物語るお札だ。
取材・文/船山直子
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