ジェーン・スーさん×伊藤亜和さん対談2/「大人だから」と、何かを「怖がってやらない」はしたくない

ジェーンスーと伊藤亜和

大人女性の最強の寄り添い人であるジェーン・スーさんと、やわらかな感性で日常を自在に紡ぐ伊藤亜和さん。年の差を越え、心地よい距離感で「友達」認定し合う2人が思う「素敵な大人」とは?

対談1/大人として評価される「自立心」は 孤立と背中合わせ からの続きです。

素敵な人間になるために、 挑戦とカジュアルな冒険を重ねる。

——素敵な大人になるために始めたいこと、やめたいことはありますか?

伊藤亜和
伊藤亜和さん(以下、伊藤) 

ガーデニングを始めたいです。少しやっては止める、という人生だったので、何かを維持したい気持ちがすごくあります。

ジェーンスー
ジェーン・スーさん(以下、スー)

継続して何かの世話をすることの、象徴としてのガーデニングってこと?

伊藤亜和
伊藤

はい。命に対しての責任ですかね。

ジェーンスー
スー

私が始めたいこと……、積極的な美容医療の導入とか、具体的なことかな(笑)。っていうのは、あくまで一例で、何かを「怖がってやらない」ということだけは絶対したくない。年を取ると、「危ないわよ」「みっともないわよ」と、やらないことが最善の策みたいな選択をしがちなので、そうならないようにしたいですね。なので、やりたいこと、やめたくないことは「うっかりやっちゃう」です。

——年齢的に大人だと、「素敵な大人になる」をどう捉えたらいいでしょう?

ジェーンスー
スー

私自身は「素敵な大人になる」ことよりも、「素敵な人間になる」ことに興味がありますね。そうなろうとする時は、何かをやめたり、自分に禁止するのではなく、ちょっとカジュアルに冒険できる状態でいたい。そういう自分が好きなので。

伊藤亜和
伊藤

カジュアルな冒険をする人に対して、「イタイ大人」という否定から入りたくないですよね。怖さを隠すために否定する大人にはなりたくないなと思う。

ジェーンスー
スー

わかる。それはなりたい大人じゃないよね。

かっこいいおばあちゃんになる前、 果てしない中年期をどう過ごす?

——素敵な憧れの先輩はいますか?

伊藤亜和
伊藤

私は椎名林檎さんに憧れます。若い頃から「早く年を取りたい」とおっしゃって、「老いる過程でいろんなものを手放したら自由になれる」と歌っていたんです。その曲のおかげで、私にとって年を取るのは悪いことじゃない、むしろ楽しみになってますね。

ジェーンスー
スー

すごい先の先まで言うと、草笛光子さん。90歳を超えてもまだお仕事をしていらっしゃって、色気もあるし、ユーモアもあるし、偉そうじゃないし。ああいう風に生きていけたらいいなと思いますね。余裕があって、すごく素敵。

伊藤亜和
伊藤

その話、『かっこいいおばあちゃんになりたい』って、みんなよく言いますよね? その発言時と「おばあちゃんになる」までの間にある果てしない中年をどう過ごすんだろう?って、最近すごく思うんです。草笛さんにも、果てしない中年期があったわけで……。

ジェーンスー
スー

ふふふ。生臭くて面白いよ~、中年。人間として、一番生臭い時。馬脚が露れますよね。

——たとえば、どういうものですか?

ジェーンスー
スー

まずは加齢が肉体に出て、その見た目の変化が、自分の思う「好ましさ」や「望ましさ」とは無縁だということに悩みが増える。それは若い頃のもっと鼻が高かったらな」といった願望とは、まるでレベルが違うんですよね。動物としての経年変化に、中身の成長が伴わない感じ。家族や仕事、人との関わりの中で、意固地になったり、発想が極端になったり、怠けが一気に出たりする。若い頃は、自信のなさからツンケンしちゃうような人も、どこかかわいらしく映る場が学校などにあったと思うけど、社会に出ると、それが途端に生々しく見えてしまう。誰かへの嫉妬や自分への自信のなさが、より露骨に、生臭く感じられてしまうんですよね、中年は。

——「経年変化」に対しては美容医療のように、気になるところに手を加えて、堂々と生きていけばいいでしょうか。

ジェーンスー
スー

どう加えるかというところに、知性がすごく表れると思いますけどね。

伊藤亜和
伊藤

それは、センスではなくて?

ジェーンスー
スー

自分が理想とする「好ましさ」に近づくには、感覚的なセンスも必要だけど、その7割は知性で成り立っていると思うんです。理想を追い求めすぎると、かえって魅力を損なうこともある。だからこそ、知性は大切だと思いますね。

伊藤亜和
伊藤

先日、草間彌生さんの展覧会に行ったんです。御年96歳で、私が知った時にはすでにおばあちゃん。なので昔はどんな感じだったんだろうと調べると、若い頃の写真が出てきて。それを見たら、今に至るまでにフォーカスされていない時代もあるかもしれないなと。でも、その時期あらずして、今の草間さんはいない。中年期、もしかしたら人知れず過ごすその時期に、知性を育ててさぼらずにいられる自信が、今の私にはないなあ。

PLOFILE

ジェーン・スー/じぇーん・すー

コラムニスト、ラジオパーソナリティ。52歳。TBSラジオ『ジェーン・スー 生活は踊る』、ポッドキャスト『OVER THE SUN』のMCとして活躍中。新著「ねえ、ろうそく多すぎて誕生日ケーキ燃えてるんだけど」(光文社)。

伊藤亜和/いとう・あわ

文筆家、モデル。日本とセネガルのダブル。29歳。「note」の投稿が注目され、エッセイ集『存在の耐えられない愛おしさ』(KADOKAWA)でデビュー。新著『変な奴やめたい』(ポプラ社)。

写真/馬場わかな、ヘア&メイク/yumi(Three PEACE)、取材・文 /松永加奈、編集/鈴木麻子

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