仕事は人生を楽しむ ツールのフランス人。仕事が生き甲斐の日本人。日仏働き方ルール5
夏は長期バカンスで優雅に見えるフランス人。でも一緒に仕事をすると、日本人以上に働き者な一面が見えました。フランス人の仕事へのスタンスを、日本で働く2人の女性に聞きました。
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日本在住歴が23年となり、会社員の日本人男性と結婚して2人の子供を育てているクリステル・ルカルヴェさん。
「夫は仕事や会食と忙しく、平日は家族全員で晩ご飯、という日がなかなか作れません。でも夜、どうしても学校で授業がある場合は、夫は家に戻って仕事をしてくれます。私たちはチームですから」
日本人のまじめさはさすが武道の国と。「型をじっくりおぼえるのは、日本人が得意とするところ。一方でフランス人の自由な発想やスピード感も魅力です」
1/自由に発言する フランス人。遠慮して黙る日本人。
来日して職を得たフランス語学校でクリステルさんが驚いたのは「フランス語を習いにきている人たちなのに『質問は?』と聞くと全員が黙って下を向くこと。とにかく驚きました。
その後、変な質問をするのが恥ずかしく、遠慮していたとわかりましたが、最初はなんて失礼!と」。今では日仏の性格の違いを把握し、おもしろいなと思えるそう。
「フランス人は会話の途中でも言いたいことがあると遮って発言します。日本人は他人が話し終わってから話し始める。だからフランス人の会議は、時に全員がしゃべりだして本当にうるさい」。日本人にとって人の話が終わってからしゃべるのは、会話のマナーのひとつ。でもフランス人から見ると“無用な遠慮”に見えることもあるようです。
2/仕事は人生を楽しむ ツールのフランス人。仕事が生き甲斐の日本人。
「我が家では会社員の夫は、がんばっても休暇は長くて1週間。だから一緒にフランスに帰省できないのが悩み。仕事を楽しむという意味ではフランス人も日本人も一緒だけど、フランス人にとって“仕事は人生を楽しむためのツール”。でも日本人は“仕事が生き甲斐”という人が多い気がします」
仕事優先は、日本という社会の風潮かもしれません。さらに「日本は祝日が多いから、まとめて休むのがむずかしいのでは?」と。
3/トラブル発生! 解決を諦めない日本人。『仕方ないよ』とフランス人。
「フランス人は悩まずに仕事を進めるので、進行が早い。日本人は悩みながら進めるから、確実だけど遅い。上司の判断ひとつをとっても、フランス人はとにかく早い」。これはクロエさんと同じ意見。
でもクリステルさんは「トラブルや仕事でわからないことがあるときは日本人に相談します。じっくり解決策を探ってくれるから。フランス人はできない、仕方ないと諦めてしまう」。さて自分の職場はどちらがいいのやら。
4/バカンス先で予定を楽しむ日本人。時間を楽しむフランス人。
「フランスの夏休みは長いから、予定を決めずゆったり過ごせる。日本は休みが短く、あれもこれも詰め込みがち」。海外のホテルで朝早くに観光にでかける日本人と、プールサイドで読書を楽しむ欧米人は対照的。
5/最優先は、自分というフランス人。規律重視の日本人。
「話をするとき、フランス人は『私はこうしたい』と話す。日本人は『どう思いますか』と話す。フランス人はとにかく“自由”」。一番自由なのは恋愛だと言います。その際も大切なのは自分だから、離婚も多いそう。
「郵便局の窓口でも、従業員同士が楽しくおしゃべりしているときは、客に『ちょっと待って』と平気でいう。悪気はないんです。自由なんです」。他人や規律を気にする日本人ではあり得ない風景と言えそう。
PROFILE
クリステル・ ルカルヴェ/Christelle Le Calvé
東京日仏学院講師。ブルターニュ出身。半年ほどフランスの語学学校で働いたのち、2001年に来日。語学学校を経て、日仏学院の講師に。友人を通じて知り合った日本人の夫と結婚し、現在は2児を得て家族4人で暮らす。
クウネル2024年9月号掲載 写真/柳原久子、イラスト/Shu-Thang Grafix、取材・文/今井 恵