【目利きが選ぶフランス映画】ジーン・セバーグのショートカットは鮮烈!おしゃれのお手本にしたシネマ
夏の終わりのアンニュイな時期。夜更かしして、フランス映画を観ませんか?フランス映画には、恋、おしゃれ、アート、濃密な人間関係…人生で大事なことが全部が詰まっている。目利き10人におすすめのフランス映画について聞きました。今回はおしゃれレジェンドの川邉サチコさんと、スタイリング・ディレクターの古牧ゆかりさんセレクト。
おしゃれのマインド、日々の服装。フランス映画を手本にした経験をもつ人は、とても多いことでしょう。その代表格を、改めて違う側面からおすすめ。
『勝手にしやがれ』
自動車泥棒のミシェルは車を盗む際、警官を殺してしまう。新人記者としてパリに来て新聞配達の仕事もしているパトリシアは彼に惹かれ行動を共にするが、やがては心を変える。ヌーヴェルヴァーグの記念碑的作品は、映像、演出の斬新さ、人物像の魅力等で世界中の支持を集め、今もなお多くの人の心に深い印象を残す。
ジャン゠リュック・ゴダール監督、主演のジャン゠ポール・ベルモンド、ジーン・セバーグの名声も世界、日本でゆるぎないものにした。1960年製作。
おしゃれなムードとキュートな女の子ファッションの洗礼。
「『勝手にしやがれ』は時代を経てもすたれないかっこいい映画の代表です。フィルムに流れるファッション性に衝撃を受けました」
スタイリング・ディレクターの古牧ゆかりさんにとっても「おしゃれスタイルの手本」でした。同時代でなく観ても新鮮な映画。どちらかというとジーン・セバーグのファッションに学んだ派と言います。ショートヘアと細身のパンツのバランスとか、メンズのシャツをはおるとか、プチバッグとかさりげないファッションがやはりツボ……。
「そのまま真似するわけではなくて、ムードとして取り入れました。60年代70年代のフランス映画のインパクトは、おしゃれなセンスをキャッチしたということでは、1本ずつが今も糧になっていると思います」
メンズライクなスタイルの手本はベルモンドの着こなし。
日本のモードやファッションがまだ黎明期だった60年代に、新鮮だったのがフランス映画のファッションと言うのは川邉サチコさん。
「フランス映画は筋を追うよりは俳優の姿や着こなしを観ていた気がしますね。私はセーヌ左岸と右岸のライフスタイルの違いなども興味深く観ていました。『死刑台のエレベーター』のマダムは右岸のブルジョワの代表、『勝手にしやがれ』は左岸の文化が背景にあった」
そんな中で参考にしたのはメンズスタイルの方だったそう。最たる例が『勝手にしやがれ』のベルモンド。
「ニュアンスもテクニックも習ったものです。トレンチ姿もかっこよかった。今もメンズっぽいスタイルが好きですし、着こなしの根っこにフランス映画があると言えますね」
すすめてくれた人
古牧ゆかり/こまきゆかり
スタイリング・ディレクター。90年代ファッション誌で活躍した後パリに3年暮らす。現在は多メディアにてファッション、インテリアの記事、広告を手掛ける。かごブランド『cargo』を主宰。
川邉サチコ/かわべさちこ
トータルビューティクリエーター。1960年代、70年代パリにてモードの仕事に携わる。「今はあまり話題にならないけれどジャン・ギャバン、シモーヌ・シニョレ、イヴ・モンタンなども素敵でしたね」
『クウネル』2024年9月号掲載 取材・文/船山直子、原 千香子
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『クウネル』NO.128掲載
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