受け継がれた古いものや、機能的な美しさを大切にーヒュッテ キュッヒェ・藤川ちえさん【住まいと暮らしvol.60】

部屋やごはん、お気に入りの道具たちを本人撮影の写真で見せていただき、バトンを繋いでいくリレー連載。前回の荒木幸恵さんのバトンを受けてご登場いただくのは、「hutte küche(ヒュッテ キュッヒェ)」を営む藤川千恵さんです。

藤川さんの暮らし

1)心地のよい衣食住
2)暮らしに小さな幸せを見つける
3)愉しめる範囲で、できるものは手作りする

自宅の一部をセルフビルドで店舗にして、週に2日ケーキや焼き菓子を販売している藤川さん。

「1979年に建てられた家を修繕しながら暮らしています。所々に残っている木製の建具がかわいらしくて、どんな人が建てたのだろうと思いを馳せていました。偶然、施主のご家族が来店してくれて、お店のある空間で国産スピーカーを制作されていたと聞くことができました。最近、このバトンを渡してくれた荒木さんの家を建てた工務店を紹介してもらって、ワークショップスペースを改装したところです」

藤川さんが営む、「hutte küche」のワークショップスペース。

受け継がれてきた古いものや、機能的で美しいものが好きだという藤川さん。できるだけものは増やさないようにしているのだとか。

「家具は古道具屋さんで見つけたり、自分でリメイクすることも。今までは、仕事も食事も映画を観るときも、背もたれのない古い丸椅子でしたが、歳を重ねて疲れるようになり、家具を久しぶりに新調しました。心地よい時間が増え、今更ながら椅子の大切さに気がつきました。もちろんたくさんの時間を共に過ごした丸椅子を場所変えして、愛用しています」

「hutte küche」では、作り手の顔が見えるもの、長く愛用できるもの、実際に使ってみて良かったもの、近隣で活躍されてる作家さんの作品などを中心に選んでいるそう。

お店では藤川さんが愛用する生活道具のほか、地元の作家が手がける作品などを中心にセレクト。

「今後は山に関連するワークショップや個展、台所展など、自分が楽しいと思えることを形にしていきたいです。登山は、歩きながらひたすら自分と向き合い、日頃の情報の多さや喧騒で少し疲れた気持ちが和らいでいくのが魅力。ささやかなことにも感謝の気持ちでいっぱいになり、心と体が整う場所です」

丸テーブルは古道具屋で見つけたもの。「当時は茶色だったものを自分で塗装を剥がして無垢にしました。ファブリックは母の手編みです」

自宅のリビングには、仕事道具がずらり。「仕事道具はどこに置いてもなじむよう、モノトーンで揃えています。陶磁器タイルの床は、掃除しやすくて気に入っています」

洗面所には、深くて広いTOTO SK106のシンクを造作したカウンターにつけて。「水栓も伸びるので、シンクを洗ったり、花瓶に水を入れたりするのに、とても使いやすいです。棚には山で拾った木の実を飾っています」

テーブルが4脚スタッキングされてるネストテーブルは、デンマークのデザイナーPoul Hundevad(ポール・ハンデバッド)の作品。

お気に入りの調理道具。「薬味が好きなので、これらの出番が多いです。すり鉢は陶芸家enさんのもの。鉄瓶は、山へ持参するためのお湯を沸かしたり、白湯を飲むときに使っています」

こちらは掃除道具。「箒はさっと使えるように、家のあちこちに掛けてあります。左の3本は自分で手作りしたもの」

家に飾る植物は、花よりもグリーンやハーブが中心。

ごはんはその日の気分で作るという藤川さん。夜は夫婦で晩酌を楽しんでいるそう。

愛犬のうにとは、時には一緒に登山することも。「無理のない範囲でごはんを手作りしています。何でも喜んで食べてくれるので助かります」

近所の蕎麦畑は、うにとの散歩コース。ここで収穫された蕎麦が毎年の楽しみだそう。「秋は蕎麦畑、春は菜の花畑になります。菜の花から採れた種は菜種油になり、お店用の焼き菓子に使うこともあります」

15年ほど続けている登山は、藤川さんにとって日常。写真は北アルプス剱岳。

山好きが高じて、屋号にhutteと名付けたそう。「趣味のクライミングで使うロープは、階段の壁に掛けて収納しています」

お店には、焼き菓子のほかに日常で使いたい暮らしの道具も並べているそう。

同じ町田市にある、クラフト工房 La・Manoの手染めの織り小物や手ぬぐいなどは、入荷するとすぐに品薄になる人気商品。

イベントでは、地産の素材を使った季節のお弁当も販売。

出張用に小屋もDIY。「素人設計ですが、この良き相棒を親しみを込めて“モバイルヒュッテ”と呼んでいます」

profile

藤川ちえ/ふじかわちえ

「hutte küche」店主。自宅の一部をセルフビルドで店舗にして、週に2日のオープンデーでお菓子を販売。イベントなどに参加しつつ、スローペースで活動している。

Instagram@hutte.kuche

藤川さんがバトンを渡すのは、グラフィックデザイナーの清水里織さん。「里織さんとは家族ぐるみのお付き合い。彼女の描く世界観は、おおらかでユーモアがあって優しくて、里織さんそのもの。仲間内で引っ張りだこのデザイナーさんです」と藤川さん。清水さんの暮らしは、7月下旬に公開予定です。どうぞお楽しみに。

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