旅好き絶賛の北海道白老町。美の複合施設『ナチュの森』と『界 ポロト』の圧倒的なおもてなし

北海道の南西部に位置する白老町。太平洋に面した地形から、夏は涼しく冬は雪が少ない快適な気候で、豊かな自然が広がります。

白老町へは、まず羽田空港から新千歳空港へ約90分。空港からは高速道路を使い、車で約45分と交通の便も良いのが嬉しい。最近は移住者も増えている人気の町、というのも納得です。
そんな白老町の自然の恵みに惚れ込んでつくられたという複合施設『ナチュの森』、そして憧れの宿『界 ポロト』に宿泊して白老町を満喫してきました。

“体験”を楽しむ複合施設『ナチュの森』へ

まずは、白老町の西部、支笏洞爺国立公園に近く、豊かな自然に囲まれた場所に位置する『ナチュの森』へ。ここは低刺激スキンメーカー「ナチュラルサイエンス」「ナチュラルアイランド」が運営する複合施設です。
化粧品をつくるファクトリーと植物や花を楽しめる庭園がひとつになったここは、ものづくりが学べるラボやミュージアム、エステサロン、カフェ、ショップまでが集まる、“工園”。

なぜ、『ナチュの森』がこの場所に? 理由は『ナチュの森』のすぐ裏手にある「倶多楽(くったら)湖」にあります。カルデラ湖である倶多楽湖の湧水は、日本屈指の透明度を誇る軟水。通常の水道水と倶多楽湖の湧水を飲み比べしましたが、喉越しの違いは明らか! さらに驚いたのは、肌に乗せたらすうっと馴染んでいったこと。
この水が化粧品づくりに最適として、廃校になった中学校の跡地を再利用する形で誕生したのが『ナチュの森』なのです。

校舎はものづくりを体験できるラボやミュージアムに、校庭は倶多楽湖の湧水が流れる小川や季節の植物や花が楽しめるガーデンに生まれ変わり、大人も子どもも楽しめる施設や空間がたくさん!

では、施設をご案内します。
まずは、校舎をリノベーションした「森の工舎」。植物や花を原料にフレグランスデザイナーが監修した「香りのラボ」、蒸留の仕組みが学べる「蒸留実験室」、約3,000冊の本が揃う「ライブラリー」、さまざまな展示を行う「ギャラリー」のほか、カフェやショップなどが集まっています。教室の間取りや黒板など学校の面影が残されていて、どこかほっこりと懐かしい気分にもなる、素敵な施設です。

たくさんの香りから今の自分に合った香りを見つけるパフュームバー。調香の体験や、オリジナルミストを作るワークショップも。

実際に蒸留して作ったオリジナルドリンクもいただける。理科室での実験のような雰囲気!

コンパクトなライブラリーながら、専門書、絵本や写真集までが揃い、選書のセンスが秀逸。ずっと居たくなった空間。

倶多楽湖の湧水で淹れた〈水出しコーヒー〉、高知県産の生姜を湧水で蒸留した〈甘くないジンジャーソーダ〉は絶品。実験器具で作るオリジナルの蒸留ドリンクも!

カフェの隣には生活雑貨やドライフラワーなどの買い物が楽しめるショップも。

北の“縄文”は謎が多くてオモシロイ! 「ナチュの森で縄文にであう展」開催中

「森の工舎」の2Fギャラリーでは『ナチュの森で縄文にであう展』を開催中。
2021年に、北海道・北東北の縄文遺跡群が世界遺産に登録されたこともあり、北海道縄文文化にも注目が集まっています。地元の文化とつながる活動として、地元・白老町や登別などから発掘された遺物などを紹介したり、縄文を知るきっかけとなる展覧会を開催することになったそう。

なぜ、ジョウモン??と最初はギモンだったのですが、これが知れば知るほど興味深い内容でした。

北海道における縄文は、狩猟と最小単位のコミュニティで支え合い、特有の文化を持っていたそうです。
豊かな自然ときれいな水のあるところを好んで暮らしていたといわれる縄文人。縄文のムラと「ナチュの森」は似ているのかも…? 縄文時代の暮らしや考えには現代人にも通じるヒントがたくさんあるはず…、といった視点で“北の縄文”が楽しく、分かりやすく展示されています。

展示を見ていくうちに、驚きや発見、想像が膨らみ、どんどん縄文人のことが知りたくなる…という沼にはまっていきました。

縄文人の“健康”にも着目。北の縄文人は虫歯が少なかった!?

北海道の縄文文化を、本土と世界の年表とでスケール比較。北の縄文時代が長く続いたことが一目瞭然。

たて穴式住居を再現! 中に入って当時の暮らしぶりを想像したり…。

1階のショップでは縄文展の関連グッズも販売!

展示は9/30(月)まで。特設サイト もぜひご覧ください。

「ナチュラルファクトリー」でモノづくりの現場を見学

「ナチュの森」のもう一つの施設、ナチュラルアサイエンスとナチュラルアイランドのスキンケア商品を作る「ナチュラルファクトリー」では、化粧品の製造ラインを見学することができます。

原料の選定、処方、技術開発から製造〜出荷までを自社でおこない、製造の現場は手術室並みの衛生レベルを保っているとか。さらに商品ひとつひとつを人の目と手で確認作業するという徹底ぶり。
見学の際は、工場用のユニフォームに着替え、化粧品ができるまでの工程を工場のスタッフが丁寧に説明してくださいます。

毎日使う化粧品も、こうやって手間暇かけて作られる現場を見ると、ちょっと見え方も変わってくる。そんなきっかけになった気がします。
工場見学は日時限定。要予約。
工場見学ツアー

湧水を贅沢に使ったビューティーサロンも

時間がたっぷりある方は、日本一の湧水の心地良さを体験できるトリートメントサロンもおすすめ。
ファクトリーの2階にある「アクアサロン」は、トリートメント、マグマヨガ、スパの3つのサロンがあり、女性限定、完全個室でサービスを受けられます。オリジナルのハーブオイルを使用したトリートメントは、お着替え不要の施術もあるので、ナチュの森滞在中の空き時間にも利用できそうです。

お電話での予約が必要。
電:0144-84-5961
営業時間:10:00〜17:00

ナチュの森

住:北海道白老郡白老町虎杖浜393-12
電:10:00〜17:00
水曜・木曜定休 ※祝日は営業
公式HP

ナチュの森で縄文にであう展
9/30(月)まで
10:00〜16:00
入場無料
特設サイト

アイヌ文化に寄り添う湯宿『界 ポロト』に宿泊

星野リゾートの温泉旅館ブランド「」から、ここ白老町に2022年に開業した『界 ポロト』。
アイヌ語で“大きな沼”を意味するポロト湖のほとりにあり、穏やかなポロト湖と、湖を囲む美しい森林の景観が目の前に広がります。

アイヌ民族の伝統や文化をテーマとするナショナルセンター『ウポポイ』に隣接する『界 ポロト』は、館内のさまざまな場所にアイヌ民族の建築様式や家具、モチーフが取り入れられています。

客室すべてがレイクビュー。客室のテーブルは、アイヌ民族の伝統的住居「チセ」の炉をイメージしてデザインされたもの。テーブル中央部はほんのり灯りが灯せるようになっている。

客室に飾られたオールは、岡田実さんの彫刻作品。

コタン(集落)をイメージしたラウンジの中央には、アオペイ(囲炉裏)を囲むような暖炉が掘り込まれている。囲炉裏はアイヌの生活の中心にある、ということからヒントを得て設計されたそう。

ラウンジは夜になるとまた違った表情に。アイヌ民族にとって火は神様(カムイ)。暖炉の火は一日中絶やさないそう。

アイヌ民族の主食「オハウ」から着想された、山菜、肉、魚を入れて煮た〈じゃがいものすり流し鍋〉がいただける朝ごはん。

とんがり屋根の湯小屋で“美肌の湯”モール温泉を満喫

ポロト湖にせり出すように立つとんがり屋根の建物は、湯小屋「△湯」(さんかくのゆ)。温泉は、世界的にも珍しい天然植物由来の有機物を含んでいるモール温泉。
実は『界 ポロト』に泊まりたかった理由の一つが、このモール温泉です。“美肌の湯”とも言われる、地中から湧き出る茶褐色の湯はとろとろとした肌触りで、湯上がりの肌はしっとりすべすべに。

「△湯」は、男湯、女湯、湯上がり処など5つのとんがり屋根が連なる。『界 ポロト』のシンボル的な建物。

宿泊棟からとんがり湯小屋の眺め。冬の季節もまた趣の違った景色。屋根の銅板は経年変化の味わいが出始めている。

浴室の構造もユニーク。ぬる湯の内風呂と露天風呂がシームレスにつながり、さらに目の前のポロト湖も一体に。まるで湖に漂っているかのような解放感。

また、宿泊棟にはドーム型屋根の湯小屋「○湯」があり、こちらは地中の洞窟のような空間。趣の異なるふたつの湯小屋で温泉を楽しめるのも嬉しいポイントです。

湯上がり処からポロト湖の眺めは絶景。窓にも三角形のモチーフが取り入れられている。

湯上がり処の天井は約10メートルの高さがあり、三角錐の形状に丸太を組んだアイヌ伝統の建築様式が見られる。

アイヌ民族の魔除けづくり “ご当地楽”を体験

全国の『界』で行われている、地域の伝統や文化を体験できるプログラム“ご当地楽”。
今回の『界 ポロト』の滞在では、アイヌ民族が魔除けとして身につけていたといわれる“イケマ”を使った魔除けづくりを体験しました。

“イケマ”とは植物の根の部分で、悪いものを退治してくれる魔除けとして身につけられていたそう。ドライにしたカレンデュラ、シラカバ、コーンフラワー、モール温泉とイタドリ茶に浸して染めた紐を使ってつくる。

六角形の折り目がついた紙に、イケマ、ドライ植物を入れ、紐を通したら完成。自分だけの特別なお守りに。

他にも、ラウンジでご当地ならではのお酒を味わう「コタンの宵の集い」や、湯守りによる語らい「温泉いろは」、朝7時からの「丹頂鶴の羽ばたき体操」など、いくつものご当地らしさに触れられるおもてなしが。私が参加した丹頂鶴の羽ばたき体操は、気持ち良くておすすめです。

アイヌ文化に触れ、ポロトの自然、温泉がたっぷりと心と体を癒してくれる湯宿。
ここ白老町だからこその体験も良い思い出となりそうです。

界 ポロト

住:北海道白老郡白老町若草町1-1018-94
電:050-3134-8092(界予約センター 9:30〜18:00)

公式HP

取材・文 神保亜紀子

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