【住まいの履歴】都会から、田畑が望める大地へ移住〜『salvia』 主宰 ・セキユリヲさんの場合〜

各界著名人の気になるお住まいを拝見。これまで住んできた家のお話も合わせてお聞きする「住まいの履歴」。今回は雑貨ブランド『salvia(サルビア)』を主宰するセキユリヲさんのお住まいです。

リビングの片隅にしつらえたワークスペース。「しまい込むとわからなくなってしまうので」と、棚はオープンにした。仕事のほとんどはリモートで行うが、思った以上に移住の影響はなかった。リビングの真ん中には丸いダイニングテーブルを置き、家族が自然と集う。家具のほとんどは夫のブランド『monokraft』のもの。

ここは北海道・東川町。北海道のほぼ真ん中にあり、大雪山に抱かれた自然豊かな土地です。旭川空港から車ですぐの利便性、文化インフラの充実などさまざまな魅力に惹かれ、移住者が年々増加しています。

セキユリヲさんもそのひとり。 約4年前に一家で引っ越してきました。 家具づくりをする夫が、仕事の関係で縁ができたのが始まり。「いつか住めたら いいね」と通っているうち、暮らしのイメージが具体的になり、この土地に根をおろすことにしました。

「棚でふさぐつもりでしたが、玄関から 直接キッチンに手が届く中間エリアとして便利なのでそのままに」

ブナ材を使ったキッチンも手づくり。左側部分はまだ途中。

出身は千葉の袖ケ浦。「築150年を 超す古民家で育ちました。大黒柱や建具 などは、囲炉裏で燻されて煤けた色に。 窓は古いガラス特有のいびつさがあり、 照明も古いものだったり......。季節によ って室礼が変わり、とても豊かでいい暮らしでしたね」。

それから20年ほど東京で暮らし、2021年に東川へ。築50年、 木造2階建ての三角屋根の家です。

骨組みを残し、ほとんどを自分たちでリノベーション。なるべく部屋の仕切り をつくらずゆったりとした空間を意識し ました。天井が高いこともあって、広々と開放的な空間です。

「北の暮らし」を支える暖炉。

「窓の外に見える十勝岳、森や田畑がこの家の醍醐味。だから家の中はシンプルがいいと思いました。都会で暮らしているときも、光と風は住まいづくりで大切にしていたものです」

セキさんのデスクの反対側には子供たちの勉強机をつくった。ライフスタイルの変化に合わせて家はアップデート。

取材時は雪解けが進み、春の到来を感じるころ。窓の外では木々が葉や花をつけ、庭の畑の野菜たちもむっくり芽を出し......。

「見てるとね、いてもたってもいられなくなるんです」。北海道のダイナミックな自然と地続きの暮らしは、ものづくりをする夫妻に心地よい刺激を与えてくれるのでした。

住まい年表

30代 ~ 40代前半 懐かしのうぐいす住宅

結婚後、渋谷の団地「うぐいす住宅」(現在は解体)に暮らす。「昭和のレトロ感の残る古い団地らしさや緑が多い所が気に入っていました」

40代半ば ~ 40代後半 都会の古いマンション

都心のヴィンテージマンションでは、 子育てがスタート。「蔦の絡まる外壁が好きでした。古い窓枠やドアの形も趣深かったです」

PROFILE

セキユリヲ/せき・ゆりを

グラフィックデザイナーとして活躍しながら、雑貨ブランド『salvia (サルビア)』を主宰。古きよき日本の伝統文化に学びながら、今の暮らしによりそうものづくりを行う。
東京・蔵前にショップがオープンしたばかり。
Instagram:@yurioseki

『クウネル』2024年7月号掲載 写真/萬田康文、取材・文/鈴木麻子

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『クウネル』NO.127掲載

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