【映画好きの3本】脚本家・田渕久美子さんおすすめの“作り手目線で語る”3本とは?
その名もズバリ、各界の映画好き著名人がそれぞれの視点でおすすめの映画3本を紹介する「映画好きの3本」。今回は脚本家の田渕久美子さんのおすすめをご紹介します。
違う形で揺さぶられた映画を 作り手の目線で語ります。
40年近くにわたり、数々の傑作ドラマに携わってきた田渕久美子さん。「映画ファンで、映画を観るときにはもちろんいち観客として楽しみますが、この仕事に就いて長いのもあって自然と作り手目線になるんです」
「やられたーと思い、作ってくださってありがとうございますとひれ伏したのが 『ショーシャンクの空に』です。テーマ、 ストーリー、構成、俳優たちの演技、撮 影、ラストシーン、すべてにおいてすご いと思いました。関わった人たちの知識とセンス、経験が寄せ集められた豊かな 世界に包まれて、もう感動」
映画のスチールなどを手がかりにする と、ティム・ロビンス扮する男が自由を求め囚人仲間のモーガン・フリーマンを 味方に脱獄する話?と思いきや......
わかりやすいけれど、単純な話ではないですよね。希望と一緒に暗いもの、汚いものも見せてくれます。なんでしょう、 キリスト教の規範が敷かれているのが作品を強靭にするのかもしれません。主人 公が憧れた希望の象徴、ジワタネホへ私も行きたいとさんざん願ったものです」
時を遡り......、20代で忘れられない出 合いをしたのは『ターミネーター』。
「観終わっても客席から立てなかったくらいの衝撃でした。永遠の原点映画と言いたいくらい。何度も観ていますし大好きですが、サラ・コナーと彼の関係の進展は早急ではないか、とは思っているんです。シーンがひとつ、セリフがふたつ加わると最高、と。あくまで個人の意見ですけれど」
当時、新人監督だったジェームズ・キャメロンの才能を見せつけられた田渕さん。映画の勢いに夢中になりながらも、 冷静にツッコミも入れていたのでした。 3本目については少し事情が異なり、 実は最後まで観終わっていないのだそう。
「息子に強く勧められて観たのが『エターナル・サンシャイン』です。面白い着想に感心しつつも、作り手や主演のジム・キャリーの我を感じてしまって。私は作る側が作品に我を出すものではないと思っているんです。また展開がループ状なので、見返してなかなか進めません。気がつくと自分がループしていて目が回る ......体に合わない映画かもしれないのですが、息子の頭の中を少し解明できた、と不思議な感慨を覚えます。あらすじなど見ずに、ぜひトライしてください。皆さんがどんな感想をもたれるか聞いてみたい映画のトップです」
好みの映画だけで人生を満たすこともできるけれど、先入観を持たずに未知の映画に接してみるのも、発見になります。
「自分の見方だけでははかりしれない価値観や人生に触れられるのが映画の素晴らしさだと改めて思いますね、好きな映画を手がかりに人間を探求することもできるとも。この映画、また観ます!」
PROFILE
田渕久美子/たぶち・くみこ
島根県出身。20代で脚本家デビュー。代表作にNHK連続テレビ小説 『さくら』、日本テレビ系『冬の運動会』、NHK大河ドラマ『篤姫』『江~姫たちの戦国~』等がある。また 小説『ヘルンとセツ』(NHK出版) はドラマ化が待たれる。
『クウネル』2024年7月号掲載 写真/上原朋也、取材・文/原 千香子
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『クウネル』NO.127掲載
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