元倉庫を大胆にリノベ。仕事場と住まいを兼ねたデザイナーの素敵な居住空間
自らの手を動かし、時間と手間をかけて作り上げた場所。グラフィックデザイナーの天野美保子さんの住まいは唯一無二の空間でした。
PROFILE
天野美保子/あまのみほこ
美術大学卒業後、デザイン会社に勤務。独立後は料理やハンドメイドなど暮らしに根付いた書籍のデザインを手掛ける。現在は東京と長野で二拠点生活をしライフワークの庭作りに勤しんでいる。
元倉庫をリニューアルして自分たちらしい住まいを実現
大きな窓ガラスを備えたエントランスにはグリーンや季節の花が飾られ、まるでお花屋さんか雑貨屋さんのよう。一転、室内に入ると年代物の車が並び、外国のディーラーのような雰囲気です。
「結婚後は一軒家を縦割りにしたテラスハウスに住んでいました。大家さんに良くしてもらい約10年住みましたが、20年ほど前、私の独立をきっかけに物件を探し始めました」
園芸が好きな天野さんと、車が趣味の夫。そして、細かく仕切られていない間取りがいいというふたりの希望のもと、あちこち探したけれど条件に合うものはなかなか見つからなかったそう。
「そんな折、夫が元倉庫の物件を見つけてきて。夫は一目で気に入ったのですが、私はこんなところに住めるのか……と半信半疑で。でも、目の前が緑一面だったことに惹かれたのと、仕事関係で建築家さんに設計を提案してもらえるという状況も手伝って決意しました」。
スケルトン状態にしてのリノベーションは、荷物用エレベーターを撤去し、らせん階段を設けたり仕事場のスペースを新たに作ったりと大掛かりなものだったそう。
「予算の関係で塗装は自分たちで。引っ越し後も暮らしながら3年ほどコツコツと塗り続けていましたね」
1階はガレージと天野さんの趣味用の小部屋、中2階は仕事スペース、2階は夫婦の生活スペースで、壁が一切ないワンフロア。本棚や腰高な家具などでゆるやかにスペースを分けているのが印象的です。
「壁がないとどうしても目に入るものが多くなるので、色味を白と明るい木の色に絞って視界がガチャガチャしないように気を付けています。家具は結婚を機に親から贈られたものや、1階には独身時代に住んでいたアパートの大家さんから譲り受けたものも。この家を整えた際はもちろん、いままで暮らしてきた家にも、それぞれに人と人とのつながりがあり、その都度たくさんの恩を受け取りました。暮らしや仕事を通して私もそのお返しができたらと日々、思っています」
写真/近藤沙菜、取材・文/結城 歩
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