母娘が営むセレクトショップ『アステラス器物家』。仙台から荻窪へ、作家の想いを伝え続けて40年。

アステラス器物家の田丸豊子さんと武田直子さん

荻窪駅南口のすぐそばにある母娘が営むセレクトショップ『Art+stellas器物家(アステラスどうぐや)』では、全国から主に作家ものの器やカゴなど、暮らしの道具が揃います。

編集者や作家、漫画家などの個性的なお客さんから、ご近所のおばあちゃんまで、日々さまざまな人が集い、荻窪の街で深く愛されるお店です。

そんなお店を営むのは、母・田丸豊子さんと娘・武田直子さんの母娘。母の豊子さんは75歳の今も、買い付けから店頭での接客まで日々活躍中です!


荻窪のアステラス器物家の店内
ガラスや陶器、カゴなど、こだわりの暮らしの道具がずらり。

「小さい頃からカタチあるものや買い物することが大好き」そう話す、母の豊子さん。このお店のルーツは、豊子さんが宮城県仙台市で25年間営んでいたセレクトショップ『器物家(どうぐや)』から始まりました。

そんな母の姿を見て、「いつかお店をやりたい」と感じていた娘の直子さん。大学のために上京後、会社員として働いていましたが転機が訪れ、2008年に荻窪でお店をオープンすることに。最初は2店体制で運営しましたが、豊子さんは仙台のお店をクローズして上京、荻窪のお店に合流しました。

店名は、直子さんがつけた『Art+stellas(アステラス)』と豊子さんのお店『器物家』を合体。『アステラス器物家』として、母娘で二人三脚で始めたお店は今年で14年目になります。

アステラス器物家の田丸豊子さんと武田直子さん
写真左:直子さん 写真右:豊子さん

「仙台でお店を始める前に、東北でカゴ探しをしていたときに出会った作家さんとは、40年近くの付き合いになりました。それくらい古い付き合いの方もいらっしゃいますし、娘が新しく開拓した作家もいます。 いろんなコラボで、このお店ができています」と話す豊子さん。

新しい作家を発掘しているのは主に直子さん。「私だけ好きでは、みんな同じ想いでお客さまに想いを届けることができません。母にはもちろん、スタッフにも見てもらい、全員で意見交換をしながらみんなが好きなものをお店に並べています」と、スタッフ全員の感性が融合し、お店の個性となって表現された空間が本当に魅力的です。

木彫漆芸作家・藤原啓祐さんの漆のお盆やコーヒースプーン
木彫漆芸作家・藤原啓祐さんの漆のお盆やコーヒースプーン

セレクトする一番の基準は、「最初に見た時に心が安らぐかどうか」「感動するかどうか」。作品が気になったら作家に直接会いに行き、「作品も人柄も素敵だった!」と惚れ込んで、作り手の魅力も含めて紹介したいと思う気持ちを何より大切にしているそうです。


●ものに作家の心を乗せて届けられる、それがお店を続ける醍醐味。

お店に並んでいるのは、主に作家もののガラス器や陶器などのキッチン道具や、かごバッグ、靴下などのファッション雑貨。こだわり抜いた選りすぐりの道具たちが揃います。母娘が何より届けたいことは、作り手の真摯な想い。

「お客さんが興味を持ってくれたら、作家さんの人柄や想いまで説明します。とにかく作品に対して真摯に向き合っていることを伝えたいんです」

ガラス作家・村松学さんのケーキスタンド。
ガラス作家・村松学さんのグラス
同じくガラス作家・村松学さんの個性的なグラス。
佐久間陶子さんの土鍋
地元で作陶する、佐久間陶子さんの土鍋。過去に何度か展示も行った人気作家のひとり。
陶器もガラスもバランスよく。お家に佇む姿が想像できるように。
星耕硝子の伊藤嘉輝さんのグラス
奥のグラスは、ガラス作家は星耕硝子の伊藤嘉輝さん。
カゴ職人中川原信一さんのカゴバッグ
40年近く付き合いのある秋田のカゴ職人・中川原信一さんをはじめ、東北のカゴもたくさん扱っている。
『hacu』の靴下
お互いの好みを知り尽くした母娘ならではのセレクトがお店の最大の魅力!
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「洋服も生活道具も、簡単に手に入れられると、きっと手放すのも簡単なのではないでしょうか。作り手の想いに共感するものを選べば、ものを大切にすることにもつながります。加えて私たちの説明を聞いて『素敵な人が作っているのね』と共感してもらえたら、もっと愛着を持ってくれるはずです」と直子さん。

藤原啓祐さんのお椀と伊藤嘉輝さんの一輪挿し
「側面や裏も見せたいからこんなふうに置いておくと、お客さんに向きを直されることも(笑)」とユニークなことが好きな母・豊子さん。お椀は藤原啓祐さん、一輪挿しは『星耕硝子』伊藤嘉輝さん。

「作家さんの高齢化や後継者不足で、作り手がどんどん減っています。作る人の生活を守らないと、文化が衰退してしまう一方。微力ですが、素敵な作品を手に取ってもらえる機会を、このお店で提供できればと思います。作家のことを知ってもらえるだけでも充分です」と、豊子さんもますますお店の大切な役割を感じ、伝え続けていきたいと話します。

アステラス器物家の田丸豊子さんと武田直子さん
直子さん、豊子さん、スタッフの吉田弥幸さん。吉田さんは金継ぎの講師も。

最後に、全国各地への買い付けはもちろん、毎日店頭に立ち続ける豊子さんにパワーの源をお聞きすると、「お店が路面店なので毎日いろんな人がいらっしゃる。話しているだけでいろんなことが広がるし、勉強になります。毎日ものすごく楽しい!人と話すことが大好きなんです」と話してくれました。

大館曲げわっぱ弁当箱とnikurのヘラ
大館曲げわっぱのお弁当箱と『nikur』のヘラ

真摯に作られたものを丁寧に届ける。母娘が大切にキャッチした作品への感動や作家への想いが詰まった、多くの人に愛されるお店。ぜひ一度お店の扉を開けてみてください。きっと、日常で活躍してくれる愛すべき道具が見つかるはずです。


<お知らせ>夏にぴったりの布とアクセサリーの展示

『アステラス器物家』では、2022年6月29(水)から7月6日(水)まで、「真木テキスタイルスタジオとマスミツケンタロウ展」を開催!

手織り作家の真木テキスタイルスタジオが紡いだ、色とりどりのスカートやブラウス、小ぶりなストールなど、夏を気持ち良く過ごせるさまざまなアイテムをご用意。

真木テキスタイルスタジオとマスミツケンタロウ展

さらに、真木テキスタイルスタジオの色どりの布と一緒に楽しみたい、マスミツケンタロウさんの真鍮や洋白のアクセサリーも合わせてご覧いただけます!

マスミツケンタロウさんのアクセサリー
マスミツケンタロウさんのアクセサリー

今年の夏の装いや暮らしを探しに、ぜひ荻窪に足を運んでみてください。

写真/近藤沙菜 取材・文/阿部里歩

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