【気持ちのいい人生を歩く練習3】「ふくらんだ情熱の風船がしぼまぬうちに」

引田かおりさん

引田かおりさんの新刊『「どっちでもいい」をやめてみる』(ポプラ社)が話題です。惹かれるのは、潔よく、示唆に富んだタイトル。長らく家族を優先して暮らし、自己肯定感に乏しかったという引田さんが、「NO」という練習を重ね、自分自身の「好き」を優先した先にみつけた気持ちよさについて、紹介してまいります。シリーズの最後には引田かおりさんのインタビューも。



1)愛犬の死を乗り越えて。「すべての不幸の源は、執着なのかも?」
2)「自分の宣伝を声高にしない人ほど、すごい仕事をしてきた達人かも?」
からの続きです。


人生は「選ぶこと」でできている

右へ行くのか、左へ進むのか。立ち止まるべきか、まわり道したほうがいいのか。冒険家の選択は生死に関わる一大事です。私たちの日常の暮らしでは、そこまでじゃないと思っていませんか? いえいえ、気がつかないだけで実は、九死に一生を得ているかもしれないのです。寝坊してその日はいつもと違う電車に乗ったとか、飲み会の誘いをめずらしく断ったとか、ラッキーとアンラッキーは表裏一体、誰でもこんなエピソードを持っていて、よく耳にする話です。私たちが意識して選ぶものもありますが、無意識や見えない力が働いていると思わずにはいられません。

人生で起きることを、人や世の中のせいばかりにしていると、いつまでたっても不満ばかり。自分の人生を生きているとは言えません。自分でそれを選んだ責任を持つ生き方のほうが、ずっと潔くて気持ちがいいと思います。私自身、そうなるまでには、たくさん練習しました。

改めて、私はいつもどんな基準で選んでいるのだろうと考えてみました。今日のおかずの材料を買いに行ったスーパーで優先しているのは、「直感」でしょうか。そこに目利きの担当者がいれば、今日食べたいアボカドを選んでもらうことも。服や靴、雑貨なんかもピンときて、何だかワクワクしたら買いますね。失敗を恐れないほうかもしれません。

引田かおりさん
ギャラリーフェブは心ときめくもので満ちている。

大きな決断はどうでしょう。土地を買う、家を買う、仕事を変わるなどなど。そういうときに大事にしているのは、「自分だけがしあわせになればいい」と思わないことです。みんながしあわせになれるだろうか、みんなでしあわせになれるかしらということを大切にしています。

引田かおりさん 
引田さんが営む『ダンディゾン』のパン。誠実で、豊かな味のするパンは、吉祥寺の街の人を幸せにしている。

私はせっかちなので、「やりたい」と思ったらすぐに取り掛かって、早く結果を出したいタイプ。じわじわ温めていたら、ふくらんだ情熱の風船がしぼんでしまいます。あとまわしにせず、すぐ行動に移すことは、「機を逃さない」ことでもあると思っています。欲しいものは、ぐっと手を伸ばして摑まなければ、さっと逃げて、永遠に失ってしまうのです。もちろんできる限り、情報を集める手間は惜しみません。静かに耳をすましていると、必要なことは耳に入るから不思議です。

ギャラリーは、作家さんと時間をかけて作り上げる空間です。すでにものがあふれている世の中で、それでも必要とされる作品なのか、人をしあわせにする力があるのか、自分に問いかけながら見極めていくしかありません。人気があるから、売れるからと何でもしていたら、収入は増えても、責任を取れなくなることを分かっていますから、私はやりません。

引田かおりさん
小さな公園の前にある『ダンディゾン』『ギャラリーフェブ』は、「ここに来ればワクワクが見つかる」と多くの人を吸い寄せている吉祥寺のパワースポット。

カトリックの学校では「宗教の時間」があり、週に一度聖書を学びました。印象に残っているのは「ひと 粒の麦」の話です。ひと粒の麦は地に落ちてこそ、命がつながり、実りとなるという内容だったと思います。
自分の選択が世のため人のためとなったら、これほど嬉しいことはありません。

食べるものを選ぶ。住む場所もきちんと選ぶ。関わる人間関係や人生をともにする伴侶。しっかり目を開き、損得だけではなく、たっぷりの愛で、よくよく考えて選択することが大切だと思っています。


絶賛発売中!

キーワード