スタイリストとして、食卓・台所と向き合い続けて数十年。今心地いいのは、手をかけなくても心が浮き立つような食卓の整え方。賢い道具や裏技調理法を駆使して「前向き手抜き」を。これなら、慌ただしい日々の中でも無理なく続けられそうです。
道具や器の力を借りて、
簡単でも豊かな食卓に。
「ていねいな暮らし」、「手間をかける楽しみ」。そんなキーワードがもてはやされている今日この頃ですが……。「そうできたらベストだけど、忙しくてそんなことしていられないという方も多いはずよね」。そうchizu さんはつぶやきます。毎日、仕事はパンパン、帰宅するのは夜。それから料理をしてご飯となると、あれこれと手間をかけている時間もエネルギーもないというのが実際のところ。簡単でパパッとできるお料理がchizu さんの基本です。
そこで活躍するのが、「手間いらずなのに手抜きに見えない」よう仕立ててくれる道具たち。耐熱の器は大中小のサイズを揃え、何かと重宝しています。「火にかけてオイルを敷いて、お肉や野菜を焼いたり、残りご飯とスープを入れてリゾットにしたり。出来上がりをそのまま食卓に出せて楽。土鍋は火の通りが早く、温かさも長持ち、食卓での見栄えもいい、料理上手になった気にさせてくれる器なんです」
調理と盛り付けも
兼ねる直火OKの陶器
頼りにしているのが、耐熱の陶器。ザクッと適当に切った野菜を並べて、オリーブオイルを回しかけ、直火にかけ、火が通ったらそのまま食卓へ。シンプル料理なのに食卓に出したときは、どーんとかっこ良く、ごちそうに見えてしまうから不思議。お肉を焼いたり、すき焼きを作ったり、いろいろに活用しています。「できたてをそのまま食卓に出せるから、使う道具は最小限。火の通りも早く、短時間でさっと完成するので重宝しています」
漆の小丼が何かと
重宝します
もうひとつおすすめなのが、漆の小丼。柔らかな手触り、滑らかな朱や黒の塗りは存在感大。土ものの多い食卓で映えます。たとえば、具だくさんのお味噌汁、にゅう麺、混ぜご飯など、「今日はこれだけで」と済ませる簡単な一品献立も、漆の小丼に盛り付けると、侘しさはまったくありません。「軽く扱いやすいのもいいですね。木のカトラリーを合わせると、より食卓が楽しくなりますよ」
chizu/チズ
食回りを中心に、インテリア、コスメなどのスタイリングを雑誌や広告などで担当。ファッションセンスにも定評があり、『私をぐっと素敵に見せる大人のおしゃれのひとさじ』(PHP研究所)の著書も。
『ku:nel』2019年5月号掲載
写真 大森忠明 / 取材・文 鈴木麻子