【フランス流生き方3・前編】50歳で人生の転換。大企業を辞め小さなブランドの立ち上げを。

アン・グラン・クレモンさん

長年の経験や人脈が蓄積され、仕事の円熟期へと入る50代。このまま駆け抜けるか、また別の挑戦をするか?考える人も多い年代です。バッグデザイナーのアン・グラン・クレモンさんは後者の選択をしました。

Anne Grand-Clément
アン・グラン・クレモンさん

北アフリカ生まれ。人気メゾンの小物デザイナーとして活躍後、2012 年『anne grand-clément』を立ち上げた。http://www.annegrandclement.com/

トッズやキャシャレルの小物デザイナーとして活躍する傍ら、日本でもセレクトショップなどで取り扱いのあるバッグブランド『URSULE BEAUGESTE』で活躍していたアン・グラン・クレモンさん。
「20歳のときにファッションの仕事を始めて、忙しくも刺激的で充実した日々を送っていました。でもいつしか、毎シーズン新しいものを作り続けることに疲れてしまったんです。ブランドが自分の予想を超えてどんどん大きくなるのも怖くなってきた頃、あらゆるしがらみが生まれ、デザインに専念できず、自分の仕事に『このままでいいの?』と、疑問を感じるようになりました。その当時つき合っていたイタリア人の彼と一緒に暮らすことにもなったので、ゆったり生きようと、思いきってブランドを手放すことにしたんです」

1 階のリビングにあるソファは50 年代のデンマークのもの。インドから持ち帰ったクッションを並べている。

アンさんは北アフリカのアルジェリア生まれ。その後モロッコ、セネガル、コートジボワールなどに暮らし、7歳からは南フランスで育ったという経歴の持ち主。異国で培われた感性を生かし、長年、ファッション界で生きてきたものの、最近のファッション業界には疑問を感じています。
「昔のファッション界は大きなグループのブランドというより、デザイナー本人たちが経営している個人ブランドがほとんどでした。でも今は大きなメゾンとなり、好きなデザインだけに専念できるものではなくなりました。大企業の中での立ち位置のむずかしさもわかるし、ブランドを牽引する責任の重さもあります。だから、それが辛くてデザイナーを退いた人たちの気持ちもわかる気がします」

エントランスにある大きな棚は工業用の丈夫で高さのあるもの。

いったんはデザインを止めてしまったものの、ファッションが大好きでデザインを始めたアンさんのクリエーター魂が消えることはありませんでした。
「もともと旅が好きで、自由になった時間を利用してあちこちに出かけたのですが、2011年、ちょうど50歳のときに初めてインドに行き、大きなショックとともにものすごいインスピレーションを得たんです」
大きなメゾンばかりが舵を取るファッション界に疑問が生じた今だからこそ、手作業でていねいに、シーズンが関係ない小物を作るのがいいのでは?と考え2012年に現在のブランドを立ち上げました。

「ハンドメイド、トラディッショナル、型染め、ジュエリー……、インドやモロッコを見て回り、さまざまなクリエーションが生まれました。同じものを作り続けるということを理解してもらうのはむずかしいけれど、そのときはそれをやってみたい!と心から思えたし、4年を経て固定ファンもついてくれました」

刺繍や手作業の商品を扱うので、色の組み合わせなどを考えることも大切な作業。

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