【小林麻美さん連載】先入観を取り払い、「何だか好き!」 その気持ちを大切にしたいと思う

小林麻美 アート

おしゃれミューズの小林麻美さんの人気連載。今回のテーマはアート。興味はあるけれど、やや難解なアートについて思いを巡らせたエッセイ第二弾です。写真は小林さん注目のアーティスト舘鼻則孝さんのシューズ作品。(第一弾はこちら

その絵の中に引き込まれそうだった
ローソクが揺れて 風が吹いていて
ドレスの衣擦れの香りまで そこにあるようだった
どれくらいの時間がたったのか
ふと この絵は誰が描いたんだろう とプレートを見ると
ムーラン・ド・ラ・ギャレット──パブロ・ピカソ とあった
え ピカソって顔が曲がったり歪んだり
えー うそ この美しい絵がピカソだなんて!
私が19歳の時
ニューヨークのグッゲンハイム美術館での
衝撃のピカソとの出逢い

人の先入観というのは とても厄介で 
本当を見誤ってしまうのだと
ピカソとの出合いで痛感した
台風の後の空の美しさや
ガラスについた水滴の煌めき
ときどき 低空ですぐそばを飛んでゆく
カラスの漆黒の羽根と嘴の美しさ
そんな身近なものにも
キラキラした感動がたくさんあると思う
あ 綺麗……
何だか好き!
その気持ちを大切にしたいと思う

ルビー色のトウシューズが
ガラスの箱の上できらきら光って
だけど どこか切なく悲しくそこに居た
欲しい!
このトウシューズが家にあったら
あれこれ勝手に想像した 舘鼻さんの個展
例えば 幽閉された美しい女の子が
このトウシューズを履かされ踊るのか
或いは 両性を具有した美しいダンサーが妖しく
たった一人の誰かのために踊る などなど……
いくらでも想像してイメージの中を彷徨える
毎回 舘鼻さんの個展は行っているけど
いつも新しいドキドキに出逢える
舘鼻さんは 私の息子位の年齢なのに
私よりずっと歳上なんじゃないか って感じることがある
アーティストと呼ばれる人の ヒリヒリした感じがなく
泰然自若
だけど その作品にはいつもドキっとさせられる

時々 ふらっと まったく知らない場所の
知らない人の個展や
藝大の卒業制作など 見たりする
何にも知らないから
実はとても有名な作家の作品でも
別にね とスルーするし その逆も!
美しいと感じるもの
美味しいと感じる味
心地よい空間
好きな香り
皆 人それぞれ 違って当たり前だと思う
例えば レストランだって「すごく美味しかった!」
と言われて 期待して食べに行ったら
全然好きじゃないことだってある
美しいと感じる心は 自分の感性だから
趣味 主観に偏っていいんだって
つくづく思ったりする

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