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書籍『生皮あるセクシャルハラスメントの光景』

本に囲まれて暮らす読書好きな方々が、今年刊行された書籍の中で最も心に響いたおすすめの1冊をピックアップ。それぞれの作品の魅力を語っていただきました。今の時代を写しとった文芸作品から、生き方や想いに共感した本、学びのための本まで。新たな出合いのきっかけに、ぜひ手にとってみてください。

これが現実。息苦しいほどに、リアルに迫る

書籍『生皮あるセクシャルハラスメントの光景』の表紙
生皮あるセクシャルハラスメントの光景』井上荒野
小説講座の人気講師が性暴力で告発された。当事者たちの生々しい感情、ハラスメントへとつながる過程をリアルに描く。1,980円(朝日新聞出版)

7年前に受けた性被害を告発する女性が主人公。告発された小説講座の講師や、周辺の人々の心の動きを丁寧に描いています。立場が違うと、こんなにも見ている光景が違うのかと、ぞっとしました。そして、これが現実なんだとも知らされます。セクハラを生む空気感、人の心の傲慢さからか弱さまで、すべてが息苦しいほどリアルに迫ってきます。

井上荒野さんの小説は、いつも読んでいるあいだ、自分自身がその小説世界に生息しているとしか思えない感じがするのですが、それゆえ読み進めるのが辛い作品でもありました。密室で起こることの多いセクハラは、たとえばノンフィクションでは描きにくい面もあるでしょう。小説だからこそ描き得る世界だし、小説だからこそ、読後私たちは存分に語り合える……そんな良さも感じました。答えではなく、問いを手渡される小説だと思います。

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