【2022年マイベストブック】文芸ジャーナリスト・佐久間文子さんが選ぶ本とは?

書籍『異常 アノマリー』

本に囲まれて暮らす読書好きな方々が、今年刊行された書籍の中で最も心に響いたおすすめの1冊をピックアップ。それぞれの作品の魅力を語っていただきました。今の時代を写しとった文芸作品から、生き方や想いに共感した本、学びのための本まで。新たな出合いのきっかけに、ぜひ手にとってみてくだい。

選ばなかった、無数の人生。自分ならどうする?

書籍『<a href=
異常 アノマリー』エルヴェ・ル・テリエ 訳/加藤かおり
ニューヨーク行きの飛行機が、異常な乱気流に遭遇。乗客は奇跡的に生還したかに見えたが……。ゴンクール賞受賞作品。2,970円(早川書房)

著者は実験的な作家集団「ウリポ」のメンバーで、本作はSF的な設定を導入した異色作。フランス最高峰の文学賞を受賞しました。展開がスリリングで、先が読めない。謎はいっこうに解かれず、SF設定なのにその枠に収まらない。読者をとことん振り回しますが、面白いので途中で振り落とされることもありません。

科学では説明がつかない異常事態が起きている、という大胆な設定を導入しておいて作家が描くのは、自分とは何かというシンプルな問い。一人ひとりに人生があり、わかれ道で選ばなかった無数の可能性がある。自分ならどうするだろうと深く考えさせられます。新型コロナの流行がおさまらず、うんざりしている人にぜひ。この本に比べたら、今の状況はまだ現実的だと気持ちが多少落ち着きます。

『クウネル』2023年1月号掲載

写真/玉井俊行、取材・文/𠮷川明子、編集/矢沢美香

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