出合ってしまったら連れて帰らずにはいられない偏愛アイテム。 厳しい眼でセレクトし、大切にしているグッズなど、 愛してやまない「もの」にまつわるストーリーをとっておきのコレクションとともにご紹介します。
サルボ恭子/さるぼきょうこ
料理家
料理家の叔母に師事した後に渡仏。パリで料理と製菓を学び、名門ホテルで経験を積み帰国。料理研究家のアシスタントとして活動後、 料理家として独立。『かんたんシンプルごほうびデザート』ほか著書多数。アトリエで開催される料理教室も大人気。
骨董市での出合いがきっかけで集めるようになりました
あるときサルボ恭子さんのインスタグラムに「なぜ私はこんなにも……」というコメントと共にアップされた一枚の写真。
そこには同じように見える木のお盆のようなものがずらり。 これは一体何で、なぜこんなにたくさん集めたのか。その謎が知りたくて、 サルボさんの元を訪れました。
「すごく説明しにくいのですが……総称するならばアンダープレートと言うのでしょうか。お盆ではなく、木製の飾り台のようなものなんです。骨董屋さんとかガラクタ屋さんみたいなところにさりげなくディスプレイで使われていたりするんですが、だいたい非売品で」
「こういうものがあったらいいなと漠然と思っていました。地方の骨董市のガラクタ箱のようなところで見つけたのをきっかけに、台湾やフランスなどの海外でも出合ったら買うようにしていて、気がついたら普通じゃない量が集まってしまいました」
20年余りかけてゆっくりと集めたニッチなコレクション。先日整理をしてみてその量に驚き、思い切って半分以上手放すことに。インスタグラムにアップしてみたら思いのほか反響があり、 会員向けのオンラインストアに出品したところほぼ完売したのだそう。
「同じように見えるかもしれませんが大きさや色、デザインが少しずつ違って、どれもそれぞれに美しい。シンプルなものほど、どんな空間にもなじむのでいいんです。我が家もリミックスなので(夫はフランス人)、どんなス タイルにもリミックスできるものが好きなんです」
用途が決まっているわけではないので、使い方はアイディア次第。
「季節によってはお月見のしつらえに使ったり、小さな花瓶のステージにしたり、食卓で調味料をのせたり。実用的だし、キャンドルやジュエリーの台にすると、のせたものがぐっと引き立つ。控えめな〈用の美〉とでも言うのでしょうか。説明がしにくいこの存在に惹かれてしまうんです」
『クウネル』2022年7月号掲載
写真/玉井俊行 取材・文/吾妻枝里子