今日までに170以上の言語に翻訳され、世界中から愛され続けている物語『不思議の国のアリス』。文化的アイコンにもなった「アリス」がもたらした影響を初めて包括的に、新たな手法で紹介する展覧会『特別展アリスーへんてこりん、へんてこりんな世界ー』が、六本木の森アーツセンターギャラリーで開催されています。アリスの原点から映画、ファッションまで、さまざまな角度から展示した、まるでテーマパークのように見応えのある会場の様子をリポートします。
『不思議の国のアリス』は、1865年にチャールズ・ラトウィッジ・ドジソンが、ルイス・キャロルのペンネームで発表した作品。本展は、19世紀から現代にかけて、アート、映画、音楽、ファッション、演劇、写真など、いかにさまざまなジャンルで「アリス」が表現されてきたのか、その魅力を貴重な作品と資料約300点を通して紹介。英国・ロンドンのヴィクトリア・アンド・アルバート博物館(V&A)を皮切りに世界巡回中の展覧会に、日本オリジナル展示も加えられています。
アリスの冒険は、イギリスの博識家で数学者のドジソンが、知人のヘンリー・リドゥルの娘たち(次女が主人公のきっかけになったアリス)に語った、即興の物語として始まりました。その後、人気の挿絵作家ジョン・テニエルと話し合いを重ね、『不思議の国のアリス』を刊行。1871年には続編として『鏡の国のアリス』を発表します。
このおとぎ話には文化や政治、科学的知識など、普遍的なテーマが盛りこまれ、産業化とグローバル化の進展により、変わっていく社会が反映されています。展示では、ドジソンの手書きの構想やテニエルの原画をはじめ、物語を生んだヴィクトリア朝の英国の時代背景も紹介。また、日本で描かれた『不思議の国のアリス』も展示されています。
アリスの世界に迷いこんだような会場を進むと、舞台は本からスクリーンに。初期のサイレント映画やハリウッド映画、1951年に公開されたディズニーの『ふしぎの国のアリス』、ティム・バートン監督の新作までを映像と共に紹介。映画化されたことで世界中に広まり、現在もアリスのイメージに影響を与え続けていることがよくわかります。
「不思議の国」の影の側面や無意識の旅は、20世紀初頭の急進的なアーティストの想像力もかき立て、新たなアリス像を生み出しました。シュルレアリズムを代表する画家、サルバドール・ダリの挿絵や、草間彌生、ピーター・ブレイクなどの作品も展示。
舞台、科学、ファッションまで、さまざまな分野で独創的な解釈がされ、創作に刺激を与え続ける「アリス」の世界。本展の元となった、ロンドン展の展示演出は、著名な舞台デザイナーであるトム・パイパーが手がけたそう。遊び心あふれる展示演出で、心からアリスの世界を堪能できました。
そして最後に見逃せないのが、本展のオリジナルグッズ。たくさんグッズがあるなか、特にヴィクトリア・アンド・アルバート博物館(V&A)のグッズは、マグカップはアンティークの風合い、ポストカードやノートは活版印刷で刷られていて、19世紀の作品の世界観を感じられる魅力的なものばかり。
会期は10月までですが、会場は連日大賑わい。体感型の展示なので、ぜひ会場へお出かけください。
特別展アリスーへんてこりん、へんてこりんな世界ー
会期:開催中〜2022年10月10日(月・祝)
開館時間:10:00~ 20:00(月・火・水曜は18:00まで)
※9/19、10/10は20:00まで。最終入館は閉館30分前まで
休館日:なし
入館料:一般 平日2,100円、土日祝2,300円ほか
会場:森アーツセンターギャラリー
東京都港区六本木6-10-1 六本木ヒルズ森タワー 52F
公式サイト
取材・文/赤木真弓