60代以降の「手放し観」。十数回の引っ越しを経てモノが激減、どんどん自由にかろやかに!【メロウライフ】

エディターの山村光春さんと、エッセイストの広瀬裕子さんによる往復連載。
「60代以降に使われる『シニア』という呼び方がどうもしっくりこない」という2人が、「私たちらしい人生の後半戦」について模索します。シニアでもなく、シルバーでもなく……。だったら「メロウライフ」なんていかがでしょう?
今回は「ものを手放し、整理する」がテーマ。これまで10回以上の引越し経験をもつ広瀬さん。引っ越すたびに持ちものが少なくなっていったとか。反対に、手放しを重ねてかろやかになったからこそ「手放さないもの」も見えてきたといいます。当時の自宅の写真とともに住まい遍歴を振り返りました。
大人になって「すきな場所での暮らし」を始めました。
「大人になってよかった」と思うことのひとつに「住む場所が自由に選べる」があります。ひとり暮らしをはじめたのが20代後半。フリーランスになったのが30歳目前。それを機に自宅で仕事をするようになり「すきな場所での暮らし」がはじまりました。

40代葉山。2階建て一軒家。収納が多いので片づいて見えますが、物はそれなりにあります。
元々、引越し好きなこともあり、住まいは、その時その時で暮らしたい場所にしてきました。引越しは(多分)13回ほど。最初は、生まれ育った東京都内で何度か住み替えをしていましたが、40歳の時に「いつか暮らしてみたい」と思っていた海辺の町・葉山へ移り住みました。40代後半は、鎌倉へ。そのあと、50歳になり瀬戸内へ。そして、60歳を前に再び東京へ戻ってきました。その間、2拠点暮らしもしましたが、いまは、ねこといっしょなので「住まいは1カ所」と決めています。
引越しの多さに「何をやっているのだか」と思うことも正直ありますが、でも、過ぎたことは過ぎたことです。いまは「60歳からのあたらしい東京」という視点で、暮らしを楽しんでいます。
引越しの魅力その①
引越しの魅力。それは、何と言っても、気持ちが新しくなることではないでしょうか。それとともに生活リズム、人間関係。食生活も変わります。
葉山にいた時は、海へ行くのが日常でした。鎌倉では、おいしいお店で友人と食事をするのが楽しみでした。瀬戸内では、新鮮な魚介類と野菜がテーブルにならびました。その土地土地の魅力が、暮らしのなかに溶けこんでいきます。
引越しの魅力その②
もうひとつの魅力は、物の整理ができることです。いまの東京の住まいは、ひとり暮らしをはじめた頃と同じくらい物が少ない状態です。車も、10人座れるテーブルも、3人掛けのソファーも手放しました。それでも、居心地よく暮らしています。むしろ、かろやかで気持ちいいほど。「あまり使わない」と感じている物や「新しい場所には合わない物」を手放せるのは、引越しという大きな出来事があるからだと思います。
物を手放して感じるのは、どんどん自由になることです。あると「たのしい」や「便利」と思っていた物が、ない方がいいのです。また「あれがほしい」「これがほしい」に時間を費やすこともなくなりました。先に書いたかろやかさ・開放感。引越しした時に気持ちが新しくなるように、ひとつ何かを手放すごとに気持ちが新しくなります。
10回以上引っ越しても、私が手放さなかったもの。
放さないものもあります。それは「窓から何が見えるか」ということ。空、緑、海、川。毎日、目にするものが自分を育ててくれると思っているため、都市にいても、郊外にいても「窓からの風景」は、手放さないでいます。
東京に戻ってきて3年。3年前より物は少なくなりました。世界の情勢により(物価高や不動産高騰、天候不順など)この先、同じ場所で暮らすかわかりませんが、基本「人生は何があるかわからない」と思っているので、その時その時の気持ちのいいほうへ。物は少なくかろやかにーー。
~アフターメロウトーク~

ちょうど僕も引っ越ししたばかりなので、そのパワフルな意識転換の効力は感じていました。ものもかなり捨てることができました。部屋をコンパクトにして、入らない状況を作ったのがよかったのかなあと思ってます。

「コンパクトにする。なる」は、大きいですね。わたしも部屋が1/3サイズになり、手放すことに拍車がかかりました。そして手放すと「なくても大丈夫」と気づいて、さらに(笑)。あとは「兼用可能」「ちいさなサイズへ」になる場合は、新しいものを取り入れるようになりました。
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この記事の
プレミアムメンバー

広瀬裕子
執筆のかたわら、50歳から空間設計の仕事をはじめ、現在は設計事務所の共同代表としてホテルや店舗、レストランなどのディレクション、フードアドバイス等にも携わる。著書に『60歳からあたらしい私』(扶桑社)など多数。
Instagram:@yukohirose19