「幸せ」を見つける名人ターシャ・テューダーの前向きメッセージ/前編。年齢を気にせず、「今できること」を楽しむ

2008年に亡くなったアメリカの絵本作家ターシャ・テューダー。自然に囲まれ、豊かな暮らしを紡いだ彼女は「幸せ」を見つける名人でした。多くのメッセージを直に受け取った翻訳家・食野雅子さんのセレクションでお届けします。
食野雅子さんの選んでくれた言葉
「前向き」をくれるターシャの言葉1


花に囲まれ、動物を飼い、糸を紡ぎ……ほぼ自給自足の暮らしを貫いたターシャ・テューダー。
自然に寄り添う生き方は「ていねいな暮らし」の理想型であり、多くの人の憧れとなりました。ただ、電気も水道もないなかでの子育てや、離婚を経て4人の子供をひとりで育て上げるなど、苦労や困難もたくさんあったはずと、本を翻訳してきた食野雅子さんは話します。
そんななかでも、楽しみを見つけ、今ある幸せを大切にし続けたターシャは、私たちの「生きるヒント」になる名言をたくさん残しています。
「前向き」をくれるターシャの言葉2

食野さんがバーモント州のターシャを初めて訪ねたのは2001年。ターシャが85歳のときでした。「とても気さくで、心配りが細やかで、ユーモアもたっぷり。質問にもていねいに答えてくれて、私たちはとても楽しい時間を過ごしました」以来、毎年訪ね、4、5日間、毎日朝の10時から夕方6時ごろまでターシャの家に入り浸り。
「ターシャが家も庭もぜんぶ開放してくれたので、その暮らしを丸ごと、つぶさに見ることができました」と、食野さんは楽しそうに振り返ります。
「前向き」をくれるターシャの言葉3

「ターシャは、『私は人のお手本になるように生きているわけではないわ』とくりかえし語っていました。ですが、彼女からとてもたくさんのことを学びました」食野さんが最も惹かれたのは、年齢や体の衰えを気にせず、「今できること」を楽しむ姿勢。
「こういう年のとり方があるのだと、目からウロコが落ちる思いでした。また、人の目を気にせず、自分がよいと思う生き方を貫いてきたこと、それも、無理をせず、周囲にちゃんと敬意を払ってそうしてきたことに感心しました」

「やりたいことがあるなら、やってみたら?」という言葉にも背中を押されたという食野さん。私たちはつい、「ああすればよかった」と後悔したり、「どうしてそうなるの?」とくよくよしたり、憤慨したりもしますが、食野さんは、ターシャの言葉を訳し続けるうちに、何事も「そんなもの」と、おおらかに受け止められるようになったそう。
「気分が落ち込んだときはターシャを見習い、顔を上げ、口角を上げてみませんか?思いついたことは、ダメでもともと、やり直せばいい、くらいの気持ちで行動すると、人生が軽やかになりますよ」
PLOFILE
食野雅子/めしの・まさこ
翻訳家
児童書「マジック・ツリーハウス」シリーズの翻訳や、『ターシャ・テューダー 人生の楽しみ方』(河出書房新社)などの著書多数。ブックデザイナー出原速夫氏と山梨県北杜市で「ターシャ・テューダー ミュージアム ジャパン」を運営。
『クウネル』2025年7月号掲載 監修/食野雅子 写真/リチャード・W・ブラウン 取材・文/ 鈴木麻子
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