子どものいない人生について。還暦を過ぎやっと、子に恵まれなかったあの頃について綴れるようになりました

〈クウネル・サロン〉プレミアムメンバー、整理収納アドバイザーでエッセイストの青木美詠子さんのエッセイ。今回のテーマは、子どもがいない人生について。「思い出すのもしんどい」と、いままで避けてきたテーマについて、じっくり向き合い、丁寧に綴ります。同じ思いをしている方へ。
いままで避けてきた「子どもがいない」人生について
人生の終盤にやり残したことを考えた時、「子供がいないことを書いていないこと」がありました。当時はつらいので書けず、還暦を超えてやっと。
せっかく忘れたことも多いのに、思い出すのはしんどいですが、体験談を読むと勇気が出るので少し書いてみます。大好きなラジオ「Blue Ocean」のパーソナリティ、住吉美紀さんがご自分の体験を書かれていたのもきっかけでした。
私の結婚は36歳と遅め。フリーのコピーライターをしており、夫は予備校講師と忙しい中、数年後からタイミング法を試しました。
途中で不妊治療も話し合いましたが、「そこまでは」という結論に。私が強く希望したら、協力してくれたかもしれません。が、私もその壮絶さをネットで知っていましたし、20代に市販薬など年中飲みすぎたのも一因で体調を崩したので、大量の薬や注射と関わる怖さもありました(医療や不妊治療を否定するものではまったくありません)。
当時5、6年やっていた「冷えとり健康法」に加え、時に鍼灸など取り入れ、長くやっていました。一度だけ妊娠検査薬の陽性反応が出て、泣きました。この時の夫の嬉しそうな顔と検査薬の写真がSDカードにあるはず(つらくて見れませんが、その表情は覚えています)。
その何日後かだったか、トイレで生理前の兆候が出て真っ青に。まだ病院には行っていない時でした。「もうダメかな」と思いながら安静に寝ていた時、夫が「大丈夫だよ。だって悲しくないから。だから大丈夫になるよ」と笑顔で言ってくれたのが忘れられません。
結局、大丈夫ではなく流れていき、泣きに泣きました(病院でも処置は必要なし)。それから何年も毎月、生理がくるたび泣いてはなぐさめてもらっていました。
最後はふたりとも年齢があがり、話し合って終えることに。自分達の子供が欲しかったので養子は考えなかったです。
その頃は妊婦さんやテレビでの出産シーンが見れなかったり、おめでたい話にショックを受けるドス黒い気持ちも。それでより落ち込みましたが、「すごくほしかったんだから、しかたないよ」と自分をハグするような気持ちもありました。
また冷えとりをやっていたので高齢出産の希望に、という思いも。でも叶いませんでした。すべてのことが叶うわけではないようです。何か別の使命があるのかも。でも冷えとりをして授かった報告も多いので、体を整える意味でも若い頃からやってみてほしいなと思います。

この原稿のために買った本。『まんが 子どものいない私たちの生き方』はしみじみ共感。『私が不妊治療をやめたわけ』は心情も詳しく。素敵なご夫婦です。
うらやましいと思っていた人の人生にもいろいろある
子供がきてくれず、つらかった頃「子供を亡くされた方はもっとつらい」という文章に出会いました。どちらがなんて誰にも決められないですが、どんな人も言えないものを持ったまま生きているのかもしれません。
たとえば子供はできたけど夫婦仲やキャリアが……という方、ひとりいても兄弟がほしいと苦しむ方、どうしても結婚したい方(私もでした)、また災害や事故で身内を亡くされた方、夫を亡くされた方の話も、ぐっときます。その思いは消えないまま、なんとか生きて、少しずつ受け入れるということでしょうか。

『母親になって後悔してる、といえたなら』は、告白した母親達のインタビュー。以前なら読めなかったですが、羨ましい人の事情や心を知れて、今の私にはよかったです。レビューもご参考に。
ずっと胸の底に思いはありますが(年々小さく)、それを持ったままでも、夫婦ふたりでとても楽しく暮らしています。また50代になると一気に老後に気持ちが向きました。あと少しの人生を楽しんだり、考えて対策することも多々。でも逆に気が紛れるので、何か新しいことを始めてみるのもやっぱりいいんですよね。
ずっと笑顔で協力してくれた夫には感謝しかありません。毎月泣く妻をなぐさめたり、本当にすべてのことが大変だったと思います。あの時の「大丈夫だよ」という言葉が、私のひとつの支え。それをもらえた人生は唯一無二で、よかったです。そんな人と巡り合えたのが幸せであり、大事にしていかなければと思っています。
aokimi's memo
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この記事の
プレミアムメンバー

青木美詠子
1963年生まれ。整理収納アドバイザーの資格をもち、不定期にさまざまな自宅セミナーを開催。個人へのお片付けサービスも行う。著書に『あおきみさんち、家を買う。』(マイナビ出版)など。長年実践する「冷えとり」に関する著書も。
https://www.aokimi.com/
Instagram:@aokimieko1616