【歴代朝ドラヒロインに注目3】『あさが来た』白岡あさ/『ブギウギ』福来スズ子。社会へ飛び込む勇気、血縁のない人との共存
連続テレビ小説「通称・朝ドラ」。録画や配信による視聴が当たり前になり、夜に朝ドラを見る人も増えた昨今。自分自身の人生や社会のあり方を考えるためのきっかけを朝ドラがもたらすことも。ヒロインたちの人生から朝ドラの魅力を探ります。フリーライターの木俣冬さんにおすすめを教えていただきました。
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【歴代朝ドラヒロインに注目2】『おしん』谷村しん/『虎に翼』佐田寅子 。時代の生きづらさ、常識を疑う女性の成功譚
からの続きです。
目 次
白岡あさ/『あさが来た』(2015年度後期 放映)
気楽な遊び人だが、妻一筋に応援し続ける 夫・新次郎の人気が沸騰。しかし実際の広岡浅子の夫にはお妾さんの存在があったという。
勇気をもって海に最初に 飛び込むペンギンであれ。
結婚、出産が家を守るための絶対的な役割、女性が社会の表舞台に立つことなどほとんどなかった江戸時代末から明治にかけて。そんな時代に女性実業家として銀行、炭鉱や生命保険事業、女子大を次々と設立していった主人公。
実在の女性実業家・広岡浅子がモデルのこの朝ドラ、男性中心の社会に押しつぶされそうになりながら、そこをなんとかかいくぐって生きる面白さ、痛快さで人気を得ました。
「ファーストペンギン」というのは、勇気をもって最初に海へ飛び込んでいくペンギンたれ、とあさの応援者だった経済人・五代友厚が彼女にかけた言葉。その言葉通り、あさは苦労を重ねながらも、次々に壁を乗り越え、夢を実現していきました。
「厳然たる男女の差別があった時代に、 女性が尊厳をもって生きるにはどうし たらいいのか。五代友厚や包容力のあ る夫の新次郎の助けが大きかったと思います。が、それを支えに柔らかく、 明るく道を切り開いていったあさの姿勢、そこに女性の可能性、希望があることが描かれていました」(木俣さん)
福来スズ子/『ブギウギ』(2023年度後期 放映)
朝ドラの中でも歌や踊り、ステージシーンが多かった本作。主演をつとめた趣里さんのパンチのある歌唱や衣装が魅力的だった。
不世出のスターにあった古風な母の顔を描く。
「仕事をやめて家に入ってもいい、子どもや家庭のことが一番大切。本作のモデルの笠置シヅ子さんという突出した才能の持ち主がこういう人だったと知って面白かったです」と木俣さん。
仕事をすること、自己実現が一番大事、というストーリーの多い朝ドラの 中ではちょっとカラーの違うヒロインとして記憶に新しい『ブギウギ』。
戦前戦後にわたって不動の人気を誇った同時に描かれたのは、血のつながらない人たちが共に暮らすことの可能性。
スズ子は自分の娘を誘拐しようとした犯人とその息子を迎え入れ、お手伝いさんとともに食卓を囲みます。
「少女時代を過ごした家族が経営する銭湯にも、お金のない人などいろんな人が集まってはしゃべっている。血縁がなくても人はつながり、共生していくことができる。そんな可能性、メッセージ性はいまの時代だからこそ考えていきたい。スズ子はその象徴的な存在だったのかもしれないです」
選んだ人
木俣 冬/きまた・ふゆ
フリーライター
著書に『みんなの朝ドラ』(講談社現代新書)、『ネットと朝ドラ』(blueprint) など。朝ドラのレビューは『CINEMAS+』で配信中。
『クウネル』2024年11月号掲載 イラスト/宇多川新聞、 取材・文 /船山直子
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