料理家・ワタナベマキさんが大切にしている3冊。料理の味がブレたり、基本を見直したいときに開く本

誰しも人生の傍に本の存在があるのではないでしょうか。

時に新しい扉を開き、背中を押し、心を癒してくれることも。素敵に年齢を重ねる13人の方々の〝かけがえのない本〟を聞いてみました。ワタナベマキさんが大切にしている3冊は?

デザインというものを言葉で理解させてくれた。

本好きの友人にすすめられて読書をすることが多いというワタナベマキさん。

料理家になる前の、グラフィックデザイナー時代に師匠からすすめられたのが『デザインのデザイン』です。

25歳の頃に読んだ『デザインのデザイン』 原 研哉 著

著者は〈無印良品〉や〈蔦屋書店〉などを手がける日本を代表するグラフィックデザイナー。生活のいたるところに息づくデザインとは何かを解く。岩波書店

「デザイナーになったばかりの当時、『どうしてこのデザインにしたのか』をきちんと説明できないことに悶々としていて。なんとなくきれいだからとか、このほうがかっこいいから、というふんわりとしたイメージでデザインを捉えていたのですが、この本が『デザインとは何か』をわかりやすく言語化してくれました。原研哉さんが生活の中のデザインを大切にされていることも知り、それからは計量スプーンひとつでも『どうしてこのデザインなのか』という視点でものを見るようになりました。料理も盛り付けなどデザインの要素が大事なので、今もときおり読み返して参考にしています」

日本料理の知恵と技、基本がすべてここに。

お弁当やケータリングの仕事を始めた頃に手に取ったのが、『旬の味、だしの味___「つる壽」語りづくし』

30歳の頃に読んだ 『旬の味、だしの味___「つる壽」語りづくし』 柿澤津八百、平松洋子 著

日本料理の名店「つる壽」の主人が、平松洋子氏を聞き手に、お椀、煮物、焼き物からおせち、お弁当、定食まで、日本の食文化と手仕事を語り尽くす。新潮社

「季節の料理から、お椀、魚の焼き方、味の含ませ方、調理道具まで日本料理の基本全部が、平松洋子さんの柔らかい言葉で語られていて、読み物としても楽しいんです。料理の味がブレたりして、基本を見直したいときのお手本。私も70歳くらいになったらこういう本が出せたらいいな、と思う憧れでもあります」

たくましく生きるための究極のライフハック本。

『地球の上に生きる』は、東日本大震災が起きた頃に出会った印象深い一冊。

38歳のときに読んだ『地球の上に生きる』 アリシア・ベイ=ローレル 著 深町真理子 訳

1970年にアメリカで出版。著者自身のナチュラルライフから学んだ知恵が満載。自然のものを活用して自分でものを作り、生活をするための手引き書。草思社

「自然食品のお店でたまたま見つけて。震災が起きた当時は、先の不安ばかりがつのり、これからどうやって生きていけばいいんだろう、とたくさん考えた時期でもありました。この本には著者が工業製品に頼らず、自分でものを作りながら生活する知恵が手書き文字と楽しいイラストで紹介されています。野外料理や石けんの作り方、手縫いの裁縫、1人でお産をする方法なども載っていて、すごく面白い!この本があれば、何があっても生きていけるかもしれない、と思わせてくれた一冊です」

PROFILE

ワタナベマキ/わたなべ・まき

グラフィックデザイナーを経て、「サルビア給食室」を立ち上げ、ケータリングから料理家としての活動をスタート。シンプルでセンスのいい料理が人気。多数のレシピ本を出版している。

『クウネル』2024年11月号掲載 写真/加藤新作、 編集・文/今井恵、矢沢美香

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『クウネル』NO.129掲載

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